会計はAIの力が最も生きてくる分野
弥生は中小企業などに向けた「シンプルで安全、使いやすい」会計ソフトを提供してきた。これにAIを取り入れることで、さらなる価値創出ができると考えている。
武藤氏は「気づかないうちにAIを活用できる環境を作る」ことを目標に掲げ、仕訳業務の自動化や、業種やニーズに応じたレポート機能の最適化を進める方針を強調。将来的は全ての処理を自動化できる未来を思い描いているとした。
同時に、日本におけるAI活用の遅れにも触れ、特に中小企業のデジタル格差の拡大は課題であると指摘している。
例えば、アメリカでは中小企業の6~7割がAI導入を検討しているが、日本では2割未満に留まっている。武藤氏は、グーグル時代に見たAI活用の効果を引き合いに出し、中小企業がAIを導入することで競争力を高める重要性を訴えた。
また、コロナ禍を機に一気にデジタル化を進めたドイツと、現状維持に留まった日本の違いも比較した。ドイツでは規制強化により地方でもデジタル化が大きく進んだが、日本は上がりも下りもなく安定していたものの、重要なチャンスを逃したとしている。
特にデジタルデバイドが中堅/中小企業に与える影響は深刻だ。広告の世界はシンプルで、売上においても広告効果においても、AIを上手に使う人といまだに自分でキーワーディングやSEOをやる人の差が広がったとしている。
武藤氏 「伸びる顧客はすごいが、マーケティングコストを削減して事業がシュリンクして倒産する例もある」「大企業は体力があるが、中小企業は上手にマーケティングしないと間に合わず、競合に負けてしまうという悪循環がある」。
会計業務とAIの可能性
会計分野でのAI活用について武藤氏は、会計ソフトは一定のルールに沿った使い方をするもので、AIの弱点として指摘されるハルシネーションなどの影響も受けにくいと指摘する。
会計分野における、AI活用の効果は極めて大きく、仕訳や入力といった煩雑な処理が効率化されることにより、経営課題にどう向き合うかなどより重要な事柄に時間と労力を割くことができるようになる。業務を効率化し、改善が必要な点を見出すツールとしての可能性も期待しているという。
業種に応じた分析レポートの最適化や、自動化された意思決定支援システムの提供など、導入弥生の強みを活かしながら、抵抗感なくAIを自然に組み込んでユーザー体験を向上させていく方針だ。








