将来は海外にも出店したい! 元国際線CAのアラフォーママがベーグル専門店を開業

文●杉山幸恵

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 2024年1月、愛知県一宮市にオープンしたベーグル専門店「TRIP TIP BAGEL (トリップ ティップ ベーグル)」。同店のオーナーである小嶋奈緒さんは3児のママであり、元国際線の客室乗務員で世界各国を飛び回っていたという経歴の持ち主。さまざまな土地の食文化に触れてきた経験を生かし、世界各国や日本各地の料理や食材を取り入れたベーグルを展開している。そんな小嶋さんのライフシフトにまつわるストーリーをお届けする。

「TRIP TIP BAGEL」の店頭に立つ小嶋奈緒さん。店内には世界地図や各国の時計が飾られている

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大好きだったCAという仕事を辞め、「新たな挑戦を」とベーグル専門店を開くことに

 1981年横浜市生まれの小嶋奈緒さんは、客室乗務員として新卒で航空会社に入社。母が元客室乗務員、そして父も航空会社に勤務していたことから、幼少時から飛行機が身近な存在だったという。

 「子どものころから漠然と客室乗務員になりたいという気持ちがありましたが、実際に目指し始めたのは大学3年生の就職活動を始める時です。ベーグルが好きになったのもそのころで、いろいろなお店の味を食べ比べていました」

客室乗務員時代に2人の子どもを出産した小嶋さんは、夫や義両親の協力も得て勤務を続けていた

 客室乗務員として充実した日々を送っていた小嶋さんは、30代後半ごろからベーグルづくりをスタート。当初はレシピ本や動画などを見て独学でつくっていたが、やがてパン教室や講習会にも通うように。その後、イベントやマルシェなどで販売を始めると、小嶋さんのベーグルへの愛やこだわりを詰め込んだベーグルは、たちまち話題になっていった。そして2021年、第3子の出産を機に「なにか新しいことに挑戦したい」と、ベーグル専門店の開業を決意する。

 「想像以上の方々に『TRIP TIP BAGEL』のベーグルを認知していただけるようになり。正直なところ大好きだったCAの仕事を辞めることは寂しかったのですが、この仕事一本に絞ってがんばろうと思いました」

イベントに出店したところ、口コミで人気が広がっていった

 途中、産休や育休をはさみながらも16年間勤務した航空会社を退職してからは、開業に向けてベーグル専門店で研修を受けた小嶋さん。家族に応援してもらいながら開業準備を進める中で、不安を感じることも多かったという。

 「開業に際して躊躇することはなかったのですが、オペレーションがうまくいくかどうか、お客様が来てくださるかどうか、スタッフのみんなとうまくコミュニケーションを取れるかなど…不安でいっぱいでした」

 2年ほどの準備期間を経てオープンした「TRIP TIP BAGEL」のコンセプトは、〝心はずむ 旅ごこちなベーグル〟。「日常から離れて旅をしているような、少し特別な時間を感じていただきたい」という思いが込められているとか。そんな世界の名物料理をアレンジしたものや、日本の名産品を取り入れたものなど、選ぶ楽しさが詰まったベーグルの数々が好評を得ている。

数種類をブレンドした国産小麦と自家製酵母を使用し、湯種製法で仕込むベーグル。外はむっちり、中はしっとりもっちりとした食感が評判

韓国のカフェで人気のスイーツをイメージしたコグマハニーバター。モチモチの生地の中にねっとりとした焼き芋とバター、ハチミツを巻き込んでいる

メキシコ料理のタコスをアレンジしたメキシカンタコスミート。オニオン生地の中に自家製タコスミートとチェダーチーズがたっぷり

台湾のソウルフードである胡椒餅をベーグルにした台湾胡椒餅。胡椒をたっぷりと効かせた豚挽肉を巻き込み、ごまをトッピングして焼き上げた

 当初は思うように集客が伸びず、「おいしいものを作っても、店を知っていただかないことにはお客様にお届けできないと痛感しました」と語る小嶋さん。フライヤーのポスティングやインスタグラムの広告など、地道に努力を重ね、開業時は小嶋さんに加え3人だったスタッフも8人にまで増えた。そんな小嶋さんにとって、目下の悩みは「働きすぎてしまうこと」だという。

 「どうしても心配性なところがあり、お休みの日にも仕事をしてしまうなど、必要以上に現場に出てしまうんです。今後は少しずつ現場をスタッフに任せて、私はマーケティングや新商品の試作に時間を割けるような体制にしたいのですが、現場が好きなのでどうしても動いてしまいます(笑)。もっとスタッフを信頼して、任せられるような仕組みを作らなければと。結果的に、仕事に重きを置きすぎてしまい、子どもたちとの時間をあまり作れていないという悩みもあるので…」

店舗での販売に加え、通販も行っている

 バラエティに富んだベーグルのラインナップに現在では多くのファンを獲得しているが、まだまだお店は発展途上で軌道にのっているとは言えないという小嶋さん。

 「今は、お客さまが喜んでくださることが何よりの幸せです。前職でもそれが一番のやりがいでしたが、自分たちが作ったものをお客さまがおいしいと言ってくださったり、楽しそうに選んでくださるお姿を拝見していると、とてもうれしい気持ちになります」

 20歳の時に初めて食べて以来、ベーグルのとりこになり、42歳で専門店を開業するまでになった小嶋さん。そのおいしさを広く知ってもらうため、現状に満足せず、さらに羽ばたくことを夢見ている。

 「日本のベーグルは世界的にもレベルが高いと思うので、10年後にはどこか海外で店舗を構えたいなと。世界の方々に日本のおいしいベーグルを味わっていただきたいです」

 最後に小嶋さんのようにライフシフトをしたい、新しい働き方を見つけたいと考えている人にアドバイスをもらった。

 「始めてから見えてくることがたくさんあるので、不安があってもまずはやってみることが大切なのかなと。私自身、今でも常にこれでいいのかと悩みながら毎日を過ごしていますし、心身共に大変なこともたくさんありますが、好きだからこそやっていられるのだと思います。何かを始めるのに年齢は関係ありませんし、やりたいことがあって、それを始められる環境があるのならば、一歩踏み出してみるのもよいのではないでしょうか」

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