レノボのSnapdragon搭載「Copilot+ PC」を購入した
今話題の「Copilot+ PC」を買ってみた。購入したのはレノボの「Yoga Slim 7x Gen 9」という機種。メモリは32GBで、CPUはSnapdragon X Eliteである。価格は約18万円と決して安くはなかったが、購入早々に米国での799.99ドル(約12万円)への値下げのニュースが入ってきた。
それまでのメーカー推奨価格(MSRP、Manufacturer's Suggested Retail Price)は1199ドル(約18万円)だったので、市中価格と消費税分を考えると乖離しているとは言えない。しかし、値下げ後はそうではない。英語キーボードであることを我慢すれば、現地からの直輸入で送料に2万円払ってもおつりが来る計算になる。非常にやるせない気持ちである。
さて本題に入って、Copilot+ PCだが、「買いなのか?」という問いに先回りして解答するならば、「今ではない」ということになるだろう。
別に値下げを恨んで言うわけではない。ローカル推論や高性能なNPUというCopilot+ PCのコンセプトは、筆者は諸手を挙げて賛成である。しかし、現在のWindows 11 Ver.24H2と、Copilot+ PC専用アプリは、AIに関して未熟な部分があり、実用にはもう少し時間が必要なように思える。
また、Copilot+ PCに関するMicrosoftのドキュメントも混乱しており、何が使えるのかはっきりしない部分がある。なので、「今焦って買う必要はない」となる。
2024年末の時点で、PCやCPUを購入するのに、低性能のNPUを搭載したものをわざわざ選ぶのは、よほどコストに敏感な場合のみだ。今後、数年以内のアプリケーションを想定すると、高性能でCopilot+ PCの条件を満たすNPUを搭載したCPUが断然有利で、一方でデメリットは無い。
Copilot+ PCのドキュメントや機能に見られる混乱
Copilot+ PCには、NPUのデモとしても有効ないくつかのAIアプリケーションがある。まず、Windowsブログの「New experiences coming to Copilot+ PCs and Windows 11 | Windows Experience Blog」(https://blogs.windows.com/windowsexperience/2024/10/01/new-experiences-coming-to-copilot-pcs-and-windows-11/)には、以下の機能があるとされている。
Recall (Preview)
Click to Do (Preview)
Improved Windows Search
Super resolution in Photos
Generative fill and erase in Paint
原稿執筆時点で、「Recall」と「Click to Do」は、Windows Insider Programに登録し、Devチャンネルのプレビュー版(本記事ではOSビルド26120.2705を利用)を、インストールする必要がある。
Recallを利用するには、Windows Insider Programに登録し、Devチャンネルのプレビュー版Windows 11を導入する必要がある。画面は、キーワードとして「Bluetooth」を入れたところ。設定ページなどが候補として提示される
「Super resolution in Photos」は、説明によれば、フォトアプリの「編集」で利用できるとのことだが、現時点ではそのようなメニュー自体がない。ただし、RecallのためにDevチャンネルのプレビュー版を入れると、Photoの編集メニューでこの機能が使えるようになる。
「Generative fill and erase in Paint」は、背景の認識と消去の機能だが、Paintに存在していることが確認できた。
これに対して、MicrosoftのCopilot+ PCの日本向け紹介ページである、「Copilot+PC を購入する:新しい時代の Windows AI PCとノートPC」(https://www.microsoft.com/ja-jp/windows/copilot-plus-pcs)には、
コクリエーター
ライブキャプション
Windows スタジオエフェクト
リコール機能(プレビュー版)
リスタイルイメージとイメージクリエーター がCopilot+ PCの新機能だと説明している。
リコール機能については、前述のようにInsider ProgramのDevチャンネルのプレビュー版を入れるしかない。
コクリエーターは、Paintにたしかに搭載されており、正しく動作しているようだ。ライブキャプションは、現状では、翻訳先言語が英語のみであり、国内ではあまり使い道がない。
「Windows スタジオエフェクト」は、もともとSnapdragon Xシリーズで有効だったもの。Copilot+ PCでは「クリエイティブ・フィルター」として、ビデオをアニメ調にするなどの機能がある。
「リスタイルイメージとイメージクリエーター」は、おそらく、Photoの編集にある機能を指していると思われる。
しかしこの機能は、UIが表示されて、操作するとNPUも動作するのだが、ずっと処理中のまま、結果が出てこない。Windows 11 Ver.24H2通常版、Devチャンネルプレビュー版のどちらも同じだ。半日ぐらい放置しておくと、エラーで止まるようだが、結果が得られないのは同じ。画像が壊れるなど、特に被害はないのでいいのだが、動かないのではどうしようもない。
そういうわけで、Copilot+ PCという「商品」は未成熟な状態だ。「AIなんぞ俺には関係ない、普通のPCとして使う」というのであれば「普通のWindows 11」ではある。ただ、Ver.24H2自体、いろいろと取り沙汰されており、筆者の環境ではまだやってこないマシンもある……。

この連載の記事
-
第508回
PC
Scalable Vector Graphics(SVG)そもそも何なのか? -
第507回
PC
Windows 11の「開発者モード」とは何か? -
第506回
PC
Windows 11は早くも来秋登場の26H2プレビューの準備が始まる -
第505回
PC
結構変化しているWindows 11のエクスプローラーの基本設定を見直す -
第504回
PC
新しいOutlookとOutlook Classic、そろそろ古いOutlookとExchangeの組み合わせは引退の頃合いか -
第503回
PC
機能が増えたこともあり、寄せ集めから統合化に進むWindowsの便利ツール「PowerToys」 -
第502回
PC
Windows 11でBluetoothのオーディオ新規格「Bluetooth LE Audio」を試す -
第501回
PC
Windows 11 Ver.25H2での変更点、新機能を整理する -
第500回
PC
Windows 11 Ver.25H2が完成した -
第499回
PC
Windowsでの致命的だが回復可能なエラーに備える手段を2つ紹介 -
第498回
PC
Windows Terminalの安定版V1.23が公開 設定UIが改良される - この連載の一覧へ


















