画像クレジット:Chinatopix via AP Images
中国政府は、半導体の材料となるガリウムやゲルマニウムなど希少鉱物の対米輸出を禁止した。中国は、世界中に張り巡らされた多くのサプライチェーンの中心的な存在であり、気候テック分野への影響は今後拡大する可能性がある。
この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。
この1週間、私はガリウムとゲルマニウムについて、これまで以上に(そしておそらく、誰もそんなに必要ないほどに)考えた。
ご存知のように、中国は12月3日、この2つの材料の対米輸出を禁止し、他の材料にも制限をかけた。この動きは、両国間で激化する貿易緊張における、最新のドラマに過ぎない。
この新たな輸出禁止措置は大きな経済的影響力を持つ可能性がある一方で、単なる始まりに過ぎないのかもしれない。中国は大国である。ニッチな材料に関してだけでなく、クリーン・エネルギー、特に電池(バッテリー)サプライチェーンにおいても絶大な力を持っている。そのため、今後の動向次第で、電気自動車や気候変動対策に対し、より広範囲に大きな影響を及ぼす可能性がある。
ここで、関連するニュースをごく簡単にまとめておこう。バイデン政権は最近、中国の先端半導体開発に役立つ可能性のあるチップやその他のテクノロジーの輸出を制限した。ドナルド・トランプ次期大統領もまた、中国製品に対するあらゆる種類の関税を提案している。
どうやら中国は、こうした一連の動きに反応し、製造業で使われるガリウム、ゲルマニウム、アンチモン、超硬材料の輸出を禁止したようだ。さらに、黒鉛(グラファイト)の販売を制限する可能性もあると述べている。これらの材料はすべて、軍事テクノロジーと民生テクノロジーの両方に使用されており、特にガリウムとゲルマニウムは半導体に使用される。
今回の輸出禁止は、昨年7月に中国がガリウムとゲルマニウムにかけた輸出制限を、さらに拡大・強化するものだ。中国はこれまで長年にわたり、米国とその西側同盟国が最先端テクノロジーにかけた制限に耐えてきた(可能性のある経済的影響など、中国の最新の動きに関する詳細は、本誌のジェームス・テンプル編集者が詳しく取り上げた記事を読んでほしい)。
今回のニュースについて私が強く感じたのは、これは始まりに過ぎないのかもしれないということである。なぜなら、中国は、世界中に張り巡らされた多くのサプライチェーンの中心的な存在であるからだ。
これは偶然のことではない。ガリウムを例に考えてみよう。この金属は、ボーキサイト鉱石からアルミニウムを生産する際の副産物である。世界最大のアルミニウム生産国である中国が、このニッチな材料の主要プレーヤーになるための優位な位置にいることは間違いない。しかし、他の国もガリウムを生産する可能性があり、そういう国がさらに増えることは間違いない。中国は、ガリウムの分離・精製技術に投資したことで、有利なスタートを切っている。
同様の状況は、電池の世界にも存在する。中国は、リチウムイオン電池のサプライチェーン全体で支配的な役割を担っている。その理由は、たまたま領土内に適切な金属資源があるからではない(実際、無い)。採取・加工技術に投資してきたからである。
リチウムイオン電池を構成する重要な材料、リチウムについても見てみよう。中国のリチウム埋蔵量は世界全体の約8%だが、世界中のリチウム供給量の約58%を加工している。電池の材料となる他の主要な金属についても、似たような状況だ。インドネシアで採掘されるニッケルは、加工のため中国に運ばれる。コンゴ民主共和国のコバルトも同様である。
過去20年にわたり、中国は資金、資源、政策を総動員して電気自動車を推進してきた。今や中国は、電気自動車登録台数で世界をリードしている。大手電気自動車メーカーの多くは中国企業であり、電気自動車とその電池のサプライチェーンの非常に大きな部分を、中国が担っている。
世界が電気自動車のようなテクノロジーへシフトし始める中、そのテクノロジーを構築するのに不可欠な材料の多くにおいて、中国の立場がいかに圧倒的優位であるかということが明らかになりつつある。
リチウムの価格は、過去1年で80%下落した。米国当局によると、その理由の1つは電気自動車の需要の減速だが、もう1つは中国がリチウムを過剰供給していることであるという。中国が市場にリチウムを溢れさせ、価格の下落を引き起こすことで、他のリチウム加工業者がこのビジネスにとどまり続けることが難しくなる可能性がある。
中国の新たな黒鉛規制も、電池市場に影響を及ぼすことになるかもしれない。黒鉛は、この材料をアノード(負極)で使用するリチウムイオン電池にとって、非常に重要である。カーボンブリーフ(Carbon Brief)の報道によると、新たな輸出禁止措置が電池材料に影響を及ぼすのか、それとも軍事用途で使用される高純度材料だけが影響を受けるのかは、まだはっきりと分からない。
現時点で、中国は主要な電池材料の輸出を具体的に禁止しておらず、今後いったいどこまで踏み込んでくるかは不透明だ。貿易政治はデリケートかつ複雑である。中国が電池サプライチェーンで起こすどのような動きも、結局は中国自身に返ってきて、自国経済に打撃を与える可能性がある。
ただ、私たちは材料政治の新たな時代に入ろうとしているのかもしれない。黒鉛に対するさらなる規制や、リチウム、ニッケル、銅に影響を及ぼす動きは、気候テクノロジーにとって世界規模の波及効果を持つ可能性がある。電池は電気自動車にとって重要なだけでなく、送電網にとってもますます重要性が増しているからだ。
緊張が高まっていることは明らかだが、次に何が起こるかは、まだ不透明だ。ムードとしては、よく言っても不確実である。そしてこのような不確実性こそ、テック界の非常に多くの関係者がグローバル・サプライチェーンを多様化する方法に目を向けている理由なのだ。そのような方法が見つからなければ、それらのサプライチェーンが実際にどれほど複雑に絡み合っているのかということ、そしてその中心を通る糸を引っ張れば何が起こるのかということが、明らかになるだけかもしれない。
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