すべての体験は「セントラルAI」が中央制御、京都大学との共同研究も
AIと人が“対等な立場で”未来を共創 アクセンチュアが京都に新体験施設
2024年11月21日 08時00分更新
アクセンチュアは、2024年11月14日、AI主導で企業の変革を支援する共創拠点「アクセンチュア・アドバンスト・AIセンター京都」を京都市中京区に開設した。
同拠点は、生成AIを中心とした世界の先端AI技術を紹介するだけではなく、実際にAIとの共創を体験してもらい、企業の変革につながる場になることを目指している。来訪者は、同施設の体験を司る「セントラルAI」に迎えられ、センター内は犬型ロボットがエスコート。さらにはAI同士の議論に加わって課題の解決策を導き出すなど、生成AIがもたらすインパクトを体感して、新たなインスピレーションを得ることができるという。
フロア面積は793.43平方メートル。アクセンチュアでは、世界25カ所に生成AIスタジオを展開しているが、世界の先端技術を集約した「フルスケールAIセンター」は、インドのバンガロールに続いて、2拠点目になる。
京都の地が選ばれた理由について、アクセンチュアの代表取締役社長/CEO兼アジアパシフィック共同CEOである江川昌史氏は、「京都には、1000年以上に渡って発展を遂げてきた革新性がある。ユニークな技術を持つ製造業も多く、歴史や産業を学術面から支える象徴的な大学が存在する。新たな示唆を生み出す生成AIを発展させ、グローバルに発信するにはふさわしい都市であると考えた」と説明。
加えて、「学術機関と連携して、AIの社会実装を進め、世界に発信していく。生成AIを活用して、日本全国のお客様の全社変革を支援していく」と述べた。
また、アクセンチュアの執行役員 データ&AIグループ日本統括AIセンター長である保科学世氏は、「AIの研究開発の役割も担うが、AIとの対話を通じて企業経営に新たな洞察を与えるための拠点になる。センター内には様々なAIがあり、それをセントラルAIが制御する。AI同士の議論や、AIと人の議論を通じて、新鮮で、刺激的なアイデアを生み出すことができる」と述べた。
施設内のすべての体験はセントラルAIが制御、AIの議論に交じって企業の未来を先取りできる場も
保科氏が指摘するように、この拠点ではセントラルAIの仕組みを体験できる点が大きな特徴となっている。セントラルAIは施設の「管理者」として、“AIと人”、“AIとロボット”、そして“AI同士”のインタラクションを司る役割を担う。
施設の体験は、受付でのセントラルAIとの対話から始まる。社名を伝えると、犬型ロボットが案内役として登場。このロボットもセントラルAIが操作する。施設内には、討論会場や生成AIスタジオといったAIとの共創を体験できる場が用意されている。
討論会場は、AI同士が議論を交わす場だ。セントラルAIの投げかける議題に対して、賛成および反対の立場を取るAIが、それぞれに多様な視点からディベートをする。この議論に、来訪者が加わることも可能だ。
生成AIスタジオは、AIコンサルタントのバーチャル検討会議を通じて、“企業改革による将来の姿”をシミュレーションすることができる。単にAIから企業改革の方法を提案されるのではなく、構造改革を推進する“積極派のAI”と、いまある人材を徹底活用する“保守派のAI”、そしてバランスをとる“中道のAI”が議論して、ファシリテータAIがそれをまとめ、そこに来場者の意見も取り入れていく。
「アクセンチュアが持つ企業改革の先進事例や、生成AI時代における最適な働き方についてのデータ、さらには企業ごとの組織体制や人員規模、経営計画の方針などをインプットする。それを、複数のAIエージェントが議論しながら、組織のあるべき姿を提案する」(保科氏)
AIコンサルタント達は、他の主張を評論したり、妥協点の模索を進めたりしながら、最終的には生成AIの業務活用によるインパクトも加味した組織変革プランを提示。実際に、AIと人とが共創することで、未来の組織の姿を導き出せるという仕組みだ。
また、AI Labでは、セントラルAIが、来訪者の会話に耳を傾けており、セントラルAIの配下で働くAIが自律的に判断。センター内でのすべての会話に基づき、示唆に富む有益な情報をタイムリーに提供してくれる。
さらに、これらの議論を通じて生じた疑問は、アクセンチュアのAI専門家を模したバーチャルエキスパートに相談することも可能だ。
保科氏は、「生成AIを活用して科学的な根拠で提示された未来図をもとに、理想的な企業改革に向けた議論を行い、戦略的なロードマップ策定につなげることができる。(共創拠点は、)最新の技術をや先端事例を紹介するだけでなく、企業の未来を一緒に築いていく役割を担う」と強調した。