原作のお色気シーンは放送できる?
――他に現在放送されている特撮番組との違いはありますか?
坂本監督:現行のヒーロー番組は子どもが対象ですが、ウイングマンは大人が視聴する時間帯の番組という点です。
だからといってバイオレンスやエロスに走っているわけではなく、青春群像劇というか恋愛要素を含めた等身大の若者の成長物語として構成していることが大きな特徴です。ヒーロー番組だと子どもが視聴することもあり、朝から恋愛を扱うのはなかなか難しいと思います。ウイングマンは青春物というか、恋愛要素もがっちり絡んでくるので、その点で現行のヒーロー番組とはまた違った観点で楽しめると思います。
――原作ではかなりお色気シーンもありましたが
坂本監督:当時の自分も中学生だったので、ドキドキしながら読んでました(笑) しかし時代が変わり、作品での表現方法や描写の制限なども大きく変わりました。今の時代に合った表現方法については、桂先生も気にされていて、現代のウイングマンをどう作るか? それでいて従来のファンも納得し、新しいファンを獲得出来るようなウイングマンをどう作って行くか?というのが、制作スタッフ一同の課題でした。
原作当時のままだと、いくら深夜ドラマといっても、露出度が高い衣装だったり、ヒップのアップだったりと放送出来ないシーンも出て来てしまいます。その辺りをどうアレンジして落とし込むかは、色々とアイデアを捻りながら取り組んだところです。
ウイングマンをはじめ、キャラクターデザインは桂先生がリファイン
――最近の特撮ヒーローのデザインはごちゃごちゃしてることが多いので、ウイングマンのようなデザインはすっきりしていていいですね
坂本監督:現行のヒーロー番組は玩具展開があるので、どうしてもそれを意識したデザインになっています。それはそれで1つのテーマですし、ビジネスとして必要な重要なことです。ウイングマンは桂先生自ら今風にアップデートしたデザインになっていて、シンプルかつクリーン、それでいて細部に至るまでディテールが足されて、とてもスタイリッシュなデザインになっている所がすごく魅力的です。
――ウイングマンのスーツはかなり動きやすそうですね
坂本監督:今回造型でスーツを作るということを念頭に桂先生がデザインしているので、スーツアクターの可動領域に合わせてパーツが分かれていたり、硬質部分と軟質部分を分けて作るということも考慮していただいています。
桂先生も連載当時に1度自分でスーツを作ったことがあったので、その経験も踏まえて、今回のデザインをあげてくれました。桂先生自ら何度も造形工房に足を運んで、チェックと修正を繰り返しながら進めていきました。
――他の特撮シリーズと比べてスーツの完成度は高いですか?
坂本監督:他の特撮ヒーローのスーツだとスーパー戦隊がもっとも動きやすいですね。仮面ライダーは甲冑があるので、その分重たく、動きも制限されてしまいます。ウルトラマンはウェットスーツなので動きに制限が出来るのと、等身大アクションだと耐久性に問題があり、コンクリートや砂利道で転がるとスーツが破損してしまう可能性もあります。視界も狭いですし。
今作のウイングマンは、どうすればスタイルを良く見せられるか? 撮影スケジュールに耐えられる耐久性を持たせられるか?という点をクリアすることを念頭に、使用する素材を含め造形部と入念な打ち合わせをして制作されました。
――他のキャラクター、たとえばシードマンなどもスーツを作ったのですか? 大きなキャラクターも登場しますよね
坂本監督:はい。そこは造形で表現することにこだわってスーツを作りました。巨大なキャラクターもスーツです。いままで様々な番組を制作した経験が活かされていると思います。
――他のキャラクターも桂先生がリファインしたのでしょうか
坂本監督:はいそうです。ウイングマンの他に、キータクラーなど、ポドリムス人は桂先生がデザインをされていて、それを造型で再現しています。シードマンなどは別のデザイナーが、桂先生が新たに考案されたコンセプトと元々のデザインを今風にアレンジしながらデザインをしていて、桂先生に監修して頂く形で進めました。
――桂先生ものすごく気合い入ってますね
坂本監督:気合い入ってますね。まさか先生ご自身が何度も造形工房に来てくださるとは思わなかったです(笑) すごくテンションが高く、自分たちも更にテンションが上がりました(笑) その桂先生が第1話を見てすごく喜んでくれたのでホッとしました。これで桂先生が気にいらなかったらどうしようと思っていましたが、絶賛してくれたのでよかったです。
CGで描くよりも温かみのある人間ドラマを目指した
――本作のアクションについてもお聞きしたいと思いますが、生身のアクションシーンが多いですね
坂本監督:今作のウイングマンは5分間しか変身できません。この設定は桂先生から変身に制限を加えてヒーローのカタルシスを出したいという提案があり、生まれたものです。それに伴い生身のアクションも要所要所にちりばめられています。
――本作のアクションでいちばん力を入れたのは?
坂本監督:どこのシーンというよりも全般ですね。フルマラソンを全速力で走ったというようなイメージす(笑) 撮影も真夏だったので、ハードでしたが、誰1人欠けることなくついてきてくれました。すべてのシーンが全力投球です。
――空中戦はあまりないようですね
坂本監督:空中戦というかウイングマンが飛ぶ描写はところどころ用意してあります。テレビシリーズという枠の中で、ガッツリ3DCGを使った演出はスケジュールや予算的なことも含めてなかなか難しいのが現状です。
ただ、今回は3DCGに頼ることなく、しっかりとした等身大の高校生のドラマを見せるというのが制作陣の意向として強かったですし、アクションもの表現も生身での迫力というか、実際にそこにいるリアリティを意識しました。懐かしさのある王道ヒーローや、高校生たちの青春群像劇を見せるのが狙いです。そのバランスをどう取っていくかというのがチャレンジでしたね。
――最近の特撮番組はエフェクトがすごすぎてキャラクターが見えづらかったりしますね
坂本監督:今回合成部とも色々と相談しまして、どのように他の特撮番組と差別化するかが難しかったところです。CGを派手に使い迫力を出すのも一つの方法ですが、もう少しリアル寄りにするという方向性で攻めてみました。派手さよりも、リアリティを楽しみながらウイングマンの世界に没入していただければと思います。
――原作ファンとしてはウイングマンの必殺技、ファイナルビームやデルタエンドがどのように表現されるのか気になると思うのですが
坂本監督:いまは合成作業に入っている段階です。どのように迫力とリアリティを両立させるかを試行錯誤しながらスタッフ一同頑張っているので、どんな技が出るか楽しみにしていて下さい!