意外な名物から興味を引く観光スポットまで、東日本にはまだ知られていない魅力がたくさん。実際につなぐ旅編集部が東日本の市町村を訪れて、「ワクワクする」シーンを体験レポートします。今回は世界遺産を有する富山県南砺市を訪れます。
1995年、岐阜県白川村荻町、富山県五箇山相倉、菅沼の3つの集落が「白川郷・五箇山の合掌造り集落」として世界遺産に登録されました。その五箇山があるまちが南砺市です。相倉集落には民宿がいくつかあるということで、世界遺産に宿泊してきたので、その様子をお届け!(伝統産業編はこちらから、合掌造りの歴史編はこちらから)
世界遺産に宿泊だ!
今回の旅で一番楽しみだったのが、合掌造りの家に泊まること。相倉には複数の民宿があり、私は「長ヨ門(ちょうよもん)」に宿泊しました。
中に入るとまず目に入るのが大きな囲炉裏。相倉伝統産業館にもありましたが、合掌造りの家には欠かせないもので、毎日火を入れることで家中に広がった煤が防腐剤、防虫剤の効果を発揮します。
「長ヨ門」という一風変わった民宿の名前について、女将の山崎真由三さんに尋ねたところ「このあたりは屋号で呼ぶ家が多く、ここも“長右衛門(ちょうえもん)”という屋号だったらしいんですね。それが早口で呼ばれるうちに“ちょよもん”になり、民宿にする際に今の名前になったと聞いています」と教えてくれました。
試しに何度か早口で「長右衛門」と繰り返してみたところ、「ちょえもん」から「ちょよもん」になるタイミングがありました。可愛らしい由来でなごみます。
部屋にエアコンがあったことがなんとなく意外。お風呂も最新式、トイレもシャワートイレ付きでしたし。最近の暑さや暮らしの快適性を考えればあっても不思議ではないですし、私としてはありがたいのですが、世界遺産の中の家にこういう機器が設置されているとちょっと驚きます。
「国の指定史跡でもあるので、景観を変えることはできませんが、家の中は生活しやすいように手を入れることができるんですよ」と山崎さん。相倉集落に住むって、そういうことでもあるんですね。
お楽しみの食事は、コイの刺身や囲炉裏で焼いたイワナ、山菜や夏野菜の天ぷらなど。黒豆の天ぷらは初めて食べましたが、豆の食感がしっかり感じられて美味しくいただきました。
五箇山名物の「五箇山豆腐」は、豆腐を3丁くらいギュッと水切りして作ったような固さで面白い食感。山崎さんは「豆のたんぱく質を効率的にたくさん取ろうとして固くなってるんじゃないかという話がありますけど、どうでしょうね」と笑っていました。本当に3丁分あるのかもしれません。
相倉に宿泊すれば観光時間外も出歩けるとのことで、夜の風景も見に行くことにしました。家々にぼうっと明かりが灯ってとてもきれい。日帰りでは見られない、宿泊客だけの特別な光景です。
山崎さんに「あまり遅い時間だと熊が出るから気を付けてね」と言われたので、20時前に出てすぐ帰ってきました。昼間通ったビュースポットへの道にも熊避けの鈴があったのでリアリティがすごい。
とはいえ、「世界遺産に宿泊できる」「宿泊客しか見ることのできない光景がある」ことはすごく貴重な体験になりました。冬もすごくきれいだろうなあ。ここは絶対宿泊すべきです。
長ヨ門
住所:富山県南砺市相倉418
HP:https://gokayama-info.jp/archives/505
現在も生活が営まれ続ける世界遺産
「世界遺産に泊まるってどんな感じだろう」くらいの気持ちで訪れた五箇山・相倉集落でしたが、合掌造りの家々のすごさはもちろん、今もそこで暮らしている方たちがいるからこそ、家が守られ歴史が続いているんだなと実感しました。自分の意思で家の修理をすることができなかったり、生活路に観光客がいたりと、ここで暮らすことに大変さもあると思います。でも現在も約50人の人々が住んでいて、そのうち15人が子供なのだそう。若い世代がこれから相倉を守っていくのかも、と感慨深い気持ちになりました。五箇山を訪れるなら、ぜひ日帰りではなく宿泊がおすすめですよ!
(伝統産業編はこちらから、合掌造りの歴史編はこちらから)
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