蘇りの魔法を眠る在庫に「LIVE STOCK MARKET in MARUNOUCHI 2024」レポート

文●MOVIEW 清水 / 編集● ASCII

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LIVE STOCK MARKET in MARUNOUCHI 2024

サステナブルなLIVE STOCKの取り組みに賛同した11のブランドが参加

 昨年に続き、丸の内で2回目の開催となる「LIVE STOCK MARKET in MARUNOUCHI」。昨年は5日間で約5000人が来場したこのファッションイベントが「LIVE STOCK MARKET in MARUNOUCHI 2024」としてバージョンアップ。9月6日(金)~9月8日(日)の3日間、丸ビル1階マルキューブのメイン会場の他、丸の内エリアの参加店舗で開催されています。

 「LIVE STOCK」とは、売れ残りの経年在庫であるDEAD STOCKをスタイリストによる新たな視点で生まれ変わらせて販売する活動のこと。ファッション雑誌などでスタイリストとして活躍し、長野県の「EDISTORIAL STORE」オーナーである小沢宏氏が提唱したこの活動は、在庫の大量廃棄などの問題に対するサステナブルな取り組みとして注目され、今回のイベントではその趣旨に賛同した11のブランドが参加しています。

 メイン会場であるマルキューブにはセレクトショップ「CONNECTING」と、小沢氏が丸の内にインスピレーションを得た「EDISTORIAL STORE POP UP」が設置されていて、ちょうど会場にいらっしゃった小沢氏にお話しを伺うこともできました。今回はこのメイン会場のほか、LIVE STOCKに参加している3つのブランドショップについてレポートします。

LIVE STOCK MARKET in MARUNOUCHI 2024

マルキューブのメイン会場。前回のレイアウトよりも中に入りやすくなったという声も聞かれました

「LIVE STOCK」はクラブ活動という小沢氏が語る、スタイリストとしての常識とは?

 セレクトショップ「CONNECTING」は前回から参加しているビームスとユナイテッドアローズに加え、ベイクルーズが参加し、日本を代表するセレクトショップ3社によるメガセレクトショップとなっています。エリア外からも手が届く展示の仕方となっているので、普段ブランドショップに足を踏み入れることに敷居を感じる人でも、通りすがりにちょっと見てみるという感じで、手軽に商品と触れあえます。

LIVE STOCK MARKET in MARUNOUCHI 2024

「CONNECTING」の展示。エリア外からも商品を見ることができる

LIVE STOCK MARKET in MARUNOUCHI 2024

タグを見ればどのブランドであるか一目瞭然

 マルキューブでの展示の良さは自然光による明るさ。買ってきた服が、ショップで見たときと色味が違うという経験をしたことはありませんか? 店内ではもっとこういう色に見えたのに、服を着て外に出たらイメージが違った……丸ビルなら外からの光がたくさん降り注いでいるので、そういうことは起こりません。天気が悪かったり、夜間は照明になってしまいますが。

LIVE STOCK MARKET in MARUNOUCHI 2024

自然光が豊富な会場なら色を間違うことはありません

●セレクトショップ「CONNECTING」
東京都千代田区丸の内2-4-1 丸ビル1階マルキューブ
営業期間:9月6日~9月8日
営業時間:11:00~19:00

 「EDISTORIAL STORE POP UP」は小沢氏が店主を務める長野県上田市にあるショップ「EDISTORIAL STORE」のPOP UPストア。LIVE STOCKの提唱者でもある小沢氏が「普段から仕事とプライベートの線引きがなく、自分の感性と仕事をシームレスにやっているのでクラブ活動っぽい」と語る本イベントには、自身が選び、手を加えたLIVE STOCKを展示・販売しています。

LIVE STOCK MARKET in MARUNOUCHI 2024

DEAD STOCKに手を加えて再編集したLIVE STOCK。長野県をイメージさせるリンゴや雷鳥の刺繍が施されています

LIVE STOCK MARKET in MARUNOUCHI 2024

タグはどのような立て付けの商品なのかが小沢氏の手書きで記載されています

 そもそもこのLIVE STOCKにいたった経緯は、スタイリストである小沢氏と、小売りやバイヤーはベクトルが違うという考えから思い至ったとのこと。「アパレルでは半年経ったら何パーセント引き、何年で廃棄といったルールが自動的に決められていますが、スタイリストは新しいからよくて古いから悪いという考えではないので、アパレルの常識とスタイリストの常識は違うのです。そうしたスタイリストのしていることを立体的に表現したのがこのLIVE STOCKです」という小沢氏。

 在庫として残っている商品をただ提供するだけではアウトレットと同じになってしまうので、そこはスタイリストの審美眼で選び直して再編集することが重要で「ファッション雑誌でスタイリストとして提案していたことと同じことをしています。読者向けであったものをコンシューマー向けにしているだけでメソッドは同じです」という小沢氏は、本イベント開催中店頭に立ち、コーディネート提案やスタイリング相談も実施します。(時間帯によって不在の場合もありますのであらかじめご了承ください)

LIVE STOCK MARKET in MARUNOUCHI 2024

「EDISTORIAL STORE POP UP」には服だけではなく、靴や帽子など体全体のコーディネートができるアイテムも展示・販売されています

●「EDISTORIAL STORE POP UP」
東京都千代田区丸の内2-4-1 丸ビル1階マルキューブ
営業期間:9月6日~9月8日
営業時間:11:00~19:00

 さらにマルキューブ会場では、アメリカ製ミシンを使ってイニシャルのオリジナル刺繍を入れるサービスも展開。会場ではハンカチとTシャツ、トートバックなどが用意されていますが、私物での対応も可能です。

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刺繍を入れてくれるアメリカ製のミシン。昨年は行列ができるほど好評でした

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刺繍を入れているところ。針がものすごいスピードで上下し、刺繍を完成

京都の黒染めを活用してDEAD STOCKを生まれ変わらせる「エディフィス&イエナ」

 ここからは「LIVE STOCK POP UP」としている11ブランドのうち3つのブランドショップを紹介します。まずは「エディフィス エ イエナ」。

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丸の内仲通に店舗をかまえる「ル ドーム エディフィス エ イエナ 丸の内」

 こちらのショップでの取り組みは、江戸時代から伝わる「黒染め」と呼ばれる染色の伝統技法を用いて在庫を黒く染めて生まれ変わらせるもの。日本は古来より一つの色に対して様々なバリエーションを有していて、たとえば一口に黒といっても墨色、呂色、濡羽色、漆黒など様々な黒色があります。こちらで染めている黒は秀明黒といって、黒よりも黒く、周囲の光をやわらかく吸収して目に映える黒色です。紋付きのような黒い衣装に用いられる染色技法で、京都の染め物工房を通して行われます。

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LIVE STOCKとなった洋服たち

LIVE STOCK MARKET in MARUNOUCHI 2024

写真ではわかりにくいですが、これぞ黒!という色です

 元は様々な色のシャツで、中にはギンガムチェックを黒染めしているシャツもありますが見た目にはまったくわかりません。どれがギンガムチェックのシャツであったかわかりますか?

 また服以外にも靴を黒染めした商品も置かれていました。商品にポリエステルなどが使われていると、その部分は染まらないのでそのままの色で残り、あとからスティッチなどを加えたかのような偶然のおもしろみも生まれます。

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黒染めしたスニーカー

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黒の風合いがとてもよくわかるシャツと、刺繍が染まらずに残ったことで模様が引き立ったスカート

 経年在庫に一手間加えることで商品として生まれ変わり、新たな魅力を引き立たせる、LIV STOCKの神髄ともいえる黒染めによる商品再生はまさにサステナブルな取り組みといえます。

●「ル ドーム エディフィス エ イエナ 丸の内」
東京都千代田区丸の内2-5-2 三菱ビル1F
営業時間:11:00~20:00

手入れをすれば長く使える靴に対する提案をする「パラブーツ」と「ラコタハウス」

 もう2店舗は「パラブーツ」と「ラコタハウス」。靴に対するLIVE STOCKを提案しています。

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青山、銀座、横浜などに店舗を構える「パラブーツ」。LIVE STOCKは丸の内店限定

 「パラブーツ」は20世紀初頭にフランスで創業した老舗シューズブランド。今回のLIVE STOCKでは、ほんの少しのしわやキズなどで商品にできなかった靴に手を加えて販売しています。しわやキズといってもごくわずかなものが多く、見た目にはわからなかったり、逆に色むらなどはいい味となっていたりするので、今回少しリーズナブルな価格で購入できる機会と捉えるとお得に感じます。

LIVE STOCK MARKET in MARUNOUCHI 2024

LIVE STOCKとして展示、販売されている靴。反対側にはレディースが展示されています

LIVE STOCK MARKET in MARUNOUCHI 2024

こうしてアップで見ても、どこに難があるのかわかりません。こちらの靴は色むらがあったとのことですが、逆に使い込んだような風合いが感じられます

●「Paraboot 丸の内店」
東京都千代田区丸の内3-2-3 二重橋スクエア1F
営業時間:11:00~20:00

 最後に紹介するのは「ラコタハウス」。こちらも丸の内仲通りに店舗を構えています。

LIVE STOCK MARKET in MARUNOUCHI 2024

アメリカのシューズブランド・オールデンを取り扱う「ラコタハウス」

 「ラコタハウス」はアメリカのシューズブランド・オールデンを取り扱うショップで、販売だけでなく、履き心地に対する相談やリペアなどのサービスも行っています。今回のLIVE STOCKではミュージアムと呼ばれるコーナーを設け、ショップオーナーの私物である300足以上の靴の中から厳選して展示。実際にリペアしている靴もあり、大切に手入れをしながら使用することで長く使え、サステナブルな事例として提案しています。

LIVE STOCK MARKET in MARUNOUCHI 2024

ミュージアムコーナーは昨年も実施していますが、今回用にすべて新たに用意されました

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コードバンという馬の皮が使われた靴。うねりのようなしわはありますが、細かいしわが入ることはないとのこと。日本には12足しか入ってこなかった、マニア垂涎の靴です

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白が映えるサドルシューズ。職人の引退などで、現在は製作できない靴です

 ラコタハウスでは、オールデンの靴に限りますが、本イベント開催中リペアなどの相談を受け、その場で修繕などをしてくれるサービスを展開しています。

●「ラコタハウス 丸の内店」
東京都千代田区丸の内3-2-3 二重橋スクエア1F
営業時間:11:00~20:00

 今回メイン会場と3つのショップを紹介しましたが、LIVE STOCKというテーマに対し、ショップそれぞれの視点で取り組んでの提案が行われています。大きくサステナブルと身構えるのではなく、ちょっとした見方の変化で各人が実行に移せることがあることを教えてもらえます。散歩がてらふらっと丸の内エリアでサステナブルな空気を感じてみませんか?

 今回紹介できなかった「LIVE STOCK POP UP」のショップは下記の通りです。

●「THE TOKYO」
東京都千代田区丸の内3-3-1 新東京ビル1F
営業時間:12:00~20:00

●「TRADMAN'S BONSAI TOKYO」
東京都千代田区丸の内3-3-1 新東京ビル1F
営業時間:11:00~21:00

●「STUDIOS 丸の内店」
東京都千代田区丸の内2-5-1 丸の内二丁目ビル1F
営業時間:12:00~20:00

●「ウィム ガゼット 丸の内」
東京都千代田区丸の内2-4-1 丸ビルB1F
営業時間:11:00~21:00 日祝11:00~20:00

●「TOOT SHINMARUNOUCHI」
東京都千代田区丸の内1-5 新丸ビル4F
営業時間:11:00~21:00 日祝11:00~20:00

●「Jalan Sriwijaya 丸の内オアゾ店/G.H.BASS 丸の内オアゾ店」
東京都千代田区丸の内1-6-4 丸の内オアゾ1F
営業時間:10:00~20:00