私の趣味は御朱印集めです。とはいえ、ただ神社仏閣を訪れるだけではもったいない。せっかくなら健康促進も兼ねて、目的の神社仏閣の最寄り駅のひと駅手前で下車。散策しつつ、周辺の街の魅力も織り交ぜながら御朱印旅に励みます。題して「ひと駅手前から歩いて行く神社仏閣1万歩の旅」──第6回は東京・日本橋の「小網神社」を訪れました。
とにかくお金がないんです!!
今私は空前絶後の金欠です。財布の中はおろか、口座の中もスカンピン。祈るような気持ちで未来の私に支払いを託してクレジットカードを使って生きています。
お金がない理由はいろいろありますが、遠めの出張が続いているのもその一つです。いえ、出張では土地勘があまりないところに行くこともあるので観光気分になれるし、美味しいものにも出会えますし、楽しいのですが。正直財布的にはだいぶ痛い。 そもそも、最初から私がお金持ちならこんなことにはならなかったはず。今からでも私の財運を上げるべきです。ということで、銭洗い弁天の元で手持ちの銭を清めるべく、小網神社を訪れることにしました。
「水天宮」の一つ手前は「三越前」
小網神社には4路線からアクセス可能。東京メトロ日比谷線、半蔵門線、東西線、都営地下鉄浅草線から行くことができます。私は東京メトロ半蔵門線「三越前」駅からスタートすることに。私にとって日本橋エリアは「レトロでおしゃれ」なイメージ。三越やコレド室町など、伝統的でありながら近代的な建物や施設が共存していて面白いですよね。たぶん数年ぶりに訪れる日本橋、楽しみです。
新紙幣はここから発行されている!
まず目についたのが、木々の隙間から見える石造りの壁が立派そうな建物。近くに行ってみると日本銀行でした。今年20年ぶりとなった新紙幣の発行や、情勢を見ての金利介入など、日本の経済面を大きく担っているのがここ。そうか、これが日本銀行かあ、としみじみしてしまいました。
日本の道路の起点を示す「元標」
私の中で、日本橋といえば麒麟像。数年ぶりに見に行こうと歩いていたところ、塔のようなものを発見しました。
国内の道路の始点は日本橋にあり、「日本国道路元標」を基準に各地までの距離が測定されています。塔のような「東京市道路元標」は旧道路法によって設置されたもので、その下には「日本国道路元標」のレプリカが設置されていました。
日本橋から飛び立たんとする麒麟の雄姿
麒麟像は日本橋の真ん中にあります。当時(2011年原作小説発表、2012年映画公開)東野圭吾さんの小説「麒麟の翼」を読み、映画も見たので、そのロケ地となった像を見に来たんでした。
「日本の道路の起点となる日本橋から飛び立つ」というイメージから作られたという麒麟像。羽のようなものが付いているのも印象的です。麒麟は想像上の生き物ですが、私にとっては、よく飲むビールのラベルにいるキャラクターとしておなじみ。羽が付いている印象はありませんが「飛び立つ」なら羽は必要ですし、この麒麟には羽がよく似合っています。
橋にある「日本橋」の文字は、江戸幕府最後の将軍、徳川慶喜が書いたもの。日本橋は1911年に現在の石造二重アーチ橋に架け替えられています。その際、江戸時代の面影を残そうということで慶喜の字を橋にあしらったそう。
カステラ1番電話は2番、3時のおやつは限定あんぱん~♪
三越やコレド室町が並ぶエリアを歩いていると「文明堂日本橋本店」がありました。百貨店などにある文明堂は利用したことがありますが、路面店は利用したことがなかったので入ってみることに。
こちらではカステラなどのお菓子が購入できるほか、オリジナルスイーツや食事が楽しめるカフェが併設されています。
私の目を引いたのが「3時のおやつあんぱん」。直営店のうち一部店舗限定で販売しているとのことで、私は初めて見ました。
あんぱんと一緒に、個包装で食べやすそうな「V!カステラ」と、夏らしいパッケージの「藻塩三笠山」も購入。あんぱんとバータイプのカステラは初めてですし、「三笠山」は食べたことがありますが限定バージョンはたぶん初めて。どれもどんな味で、どんな感じなのか、食べるのが楽しみです。
あんぱんは温めるのがおすすめとのことだったので、家に持ち帰って、電子レンジで軽く温めていただくことに。ここからしばらく、我が家での食レポにお付き合いください。
あんぱんの外側の生地はふわっとやわらかく、中はしっとりしていて美味しい。あんこはひと口食べて「どら焼きに使われているものでは?」と分かるほど濃密な風味。あとからどら焼き「三笠山」に使われているあんこと知り、やはりね!
文明堂 日本橋本店
住所:東京都中央区日本橋室町1-13-7
公式サイト:https://www.bunmeido.co.jp/
私の細胞を震わせた激ウマ「ミカド珈琲のモカソフト®」
時間を戻して参拝レポートの続きを。日本橋を行く私もひと休みしたくなったので、ちょっとレトロな店構えが気になった「ミカド珈琲店」に立ち寄り。1948年、日本初のヨーロッパ式スタンドコーヒーショップとしてオープンした老舗です。その頃のコーヒーは一般庶民にとって高価だったため、少しでも多くの人に飲んでもらいたいとの想いから、店内を立ち飲みスペースにする代わりに、コーヒーの料金を半額にして販売していたそう。今ではすっかり庶民に親しまれる飲み物になっているので、創業者の先見の明がすごい!
冷たいコーヒーを飲もうと思ってメニューを開きましたが、「半世紀もの間親しまれているメニューです」のコピーに心を動かされて「ミカド珈琲のモカソフト®」(¥700)を注文。アイスクリームはわりと食べていますが、ソフトクリームを食べるのは久しぶりです。
ソフトクリームはコーヒーの味がしっかり感じられ、甘すぎないところが好み。ミルクの風味とすっきりとした味わいが、暑さで疲れた体に沁みます。やわらかくてなめらかで、細胞に沁み込んでいく感じがする…。ソフトクリームってこんなに美味しかったんでしたっけ。世の中の人は全員、夏はソフトクリームを食べるべきです。
ミカド珈琲店 日本橋本店
住所:東京都中央区日本橋室町1-6-7
公式サイト:https://mikado-coffee.com/
海外ドラマ「SHOGUN 将軍」のモデルに!日英貿易に寄与したイギリス人の屋敷跡
小網神社方面へ歩いて行くと、三浦按針の屋敷跡の石碑がありました。調べてみると、三浦按針とは、イギリス人のウイリアム・アダムスの日本名。オランダ東印度会社東洋派遣隊の航海士で、1600年に大分県に漂着した後徳川家康の通商顧問になり、日英貿易の発展に貢献した人物です。江戸時代に日本名を与えられるなんて、家康に相当気に入られていたのでしょうね。
また三浦按針は、真田広之さんがプロデュースして大ヒットした海外ドラマ「SHOGUN 将軍」のモデルでもあります。私はドラマは見れていないのですが、この出会いのおかげで俄然興味が湧いてきました。
実は二度目の参拝となる小網神社
小網神社を訪れたのは平日15時頃。小さな神社なのですが、若い人から外国人観光客らしき人、ビジネスマンまで、今まで訪れた神社の中で一番参拝客が多い!
小網神社は1466年、地域の疫病を治めるために創建され、「倉稲魂神(うがのみたまのかみ)」「市杵島比賣神(いちきしまひめのかみ/弁財天)」「福禄寿」を祀っています。第二次世界大戦の際に「出征奉告祭」を行った出征兵士たちが全員生きて帰ってきたことから、小網神社は「強運厄除の神さま」ともいわれるように。
小網神社は日本橋エリアの7つの神社に1柱ずつ鎮座する神様をめぐる「日本橋七福神めぐり」の場所の一つ。「健康長寿」のご利益、そして福徳や財徳などさまざまな「徳」を授ける神様「福禄寿」の像があります。この日本橋七福神めぐりについて、宮司の服部匡記さんに尋ねてみました。実は私、2018年にプライベートで日本橋七福神めぐりをしており、小網神社にも訪れたことがあるんですよね。
服部さんは「もともとはこのあたりの神社を復興させようということで始まったものなんです」と話してくれました。
「布教もないし教義もなく、お参りすることで徳が積まれていくというような考え方でした」(服部さん)という神道は、次第に仏教と融合したスタイルの信仰となっていきます。現在でも初詣で神社にお参りしたり、法事でお寺に行ったりと、神道と仏教が混ざり合った生活をしている人は多いのではないでしょうか。
そんな中、国は1868年に神仏分離令を発布し、仏教を排除し始めます。服部さん曰く、「国のお墨付きを得たようなものだとして、神社が人気になった」のだそう。が、終戦後になるとGHQが“神道が軍国主義を植え付けた”として、神社を解体しようとしました。
「最終的に解体はなくなりますが、神社の存在はすっかり落ち込んでしまいました。先代、先々代がそれをなんとかしようと各地で行われていた七福神めぐりを参考に、日本橋でも“日本橋七福神めぐり”を始めることになったんです。このあたりの地域は建物が密なので巡拝距離が短く、短時間に参拝できるのが特長ですね」(服部さん)
うろ覚えですが、以前訪れた時はこんなに混雑していなかったし、どちらかというと空いていたような…。この数年で何があったのでしょうか。
「2018年頃はちょうど参拝される方が増える直前くらいだと思います。その後SNSを通じて情報が広がったらしく、台湾や香港、シンガポールなどからの参拝者が増えましたね。みなさん財運アップということで、銭洗い弁天がお目当てのようです」(服部さん)
銭洗い弁天は、その水で金銭を清めて財布などに収めておくと財運を授かるとされています。私も今財運を上げたくて仕方ないので、そのご利益にあやかれたらいいな…という気持ちで銭を洗います。
最後に、服部さんにこの神社でお気に入りの部分を尋ねると「社殿の向拝(こうはい)のところにある昇り龍と降り龍」という答えが。
「昇り龍は“願い事を神様に伝える”、降り龍は“ご利益を持ってくる”といわれています。私自身、ものすごく強運だと感じたことはありませんが、受験で希望するところに入学できなくても良い出会いがあったりなど、身の丈に合った幸運はいただいていると思っています。神様だからといってお願いごとをするばかりでなく、人に対するように丁寧に接し、謙虚に毎日を積み重ねていくことで、ご利益を感じ取れるようになるのではないでしょうか」(服部さん)
確かに私はお金がないだけで、それ以外は幸せかもしれません。ついあれもこれもと幸せを求めて願ってしまいがちですが、丁寧に毎日を過ごすことで財運へのご利益を感じ取れるようになるのかも…。
すっかり話し込んでしまったところで、いよいよ御朱印をいただくことに。私が2018年にいただいた御朱印を見て、「それも私が書いたものですね」と服部さん。なんだかご縁を感じてうれしい! 6年の時を経て、改めて服部さんの御朱印をいただきます。
小網神社
住所:東京都中央区日本橋小網町16-23
公式サイト:https://www.koamijinja.or.jp/index.html
今回の歩数は3,062歩
都心部ということであまり歩数は伸びなかったものの、日本橋は近代と現代が混ざり合ったようなエリアで楽しく歩くことができました。首都高の高架も多いので、橋などの建造物が好きな人にもおすすめですよ。さて、次はどのエリアを歩こうかな。
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