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Auro-3Dのフォーマットをフルに活かした配信はレア!

これが最大13.1ch/ハイレゾのライブ配信だ!ーーJAZZ NOT ONLY JAZZの熱気にふるえた

2024年08月14日 13時00分更新

文● ASCII 写真●Maho Korogi(ライブ風景)

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恐ろしいまでの解像感、そして配信だから感じられる
新しいライブの側面と楽しみ方に感激!

 筆者はこの配信のために作られた13.1ch/96kHzのマスターを、WOWOWの辰巳放送センターに用意された試写室「オムニクロス・スタジオ」で体験できた。オムニクロス・スタジオは水平方向に11台、天井に17台、床レベルに3台、サブウーファー2台(合計33台)のスピーカーを配置し、Auro-3D、Dolby Atmos、360 Reality Audio、22.2chサラウンドなど、主要なイマーシブサラウンドフォーマットすべてについて、各フォーマットが推奨するスピーカー配置で音をチェックできるようになっているのが特徴だ。

 この素晴らしいシステムで体験することができたコンテンツの興奮についても、ぜひ触れておきたい。

 JAZZ NOT ONLY JAZZは、ジャズドラマーの石若駿氏が率いる次世代実力派バンドThe Shun Ishiwaka Septetと、様々なゲストアーティストが共演する一夜限りのライブセッション。ゲストに招かれたのは、アイナ・ジ・エンド、上原ひろみ、大橋トリオ、田島貴男(Original Love)、PUNPEE、堀込泰行などジャンルをまたいだ実力派アーティストたち。

 すでに公演の幕は大盛況の中、閉じているが、8月16日から始まるのは、このJAZZ NOT ONLY JAZZの後日有料配信版だ(フルバージョンは9月にWOWOWで放送)。チケットは6月7日から販売中で、視聴期間は8月16日から8月23日まで(チケットの購入も同日まで可能)。

 上にも書いたように、一度買えば、期間内は何度も見られるので、配信フォーマットによる画質や音質の違いを体験したいという人にもおすすめだ。試聴ではライブ映像の中から4曲を聞いた。

 まず感じたのは音離れの良さだ。サラウンドではスピーカーの数が増える分、音源が含む情報の再現性が向上すると言われるが、このライブでも各楽器のタッチの差や音色の違いなどが明瞭になり、プレーの解像感が上がり、細かなニュアンスや会場の生の雰囲気を感じやすくなる。

 The Shun Ishiwaka Septetによる最初の曲ジョン・コルトレーンのカバー「A LOVE SUPREME」ではトランペット、サックスのユニゾンの音が生々しく、前に飛んでくる感じがすごい。ベースの音は太く、叩く位置に連動したドラムスの動き、音葉の広さ、会場に一体化したような包囲感などが感じられる。

 こういった音はライブの現場の方がよりよく感じられると思いがちだが、映像付きということで、曲の聞きどころや披露されるテクニックのどこに注目すべきかが明確となり、より音の世界を実感しやすくなる面もある。

 仮に会場に足を運んだ人でも、ライブ配信を通じて生演奏にはない魅力に触れられるのではないかと実感できた。

 続いて聞いた曲はゲストアーティストのアイナ・ジ・エンドさんとのセッション「私の真心」。サラウンドコンテンツだが、音については前方からの音が中心になっていた。後方からのアンビエンス成分は感じるので、客席にいるような雰囲気はある。低域はディープだが、重くなりすぎず軽くスパンと立ち上がってくる。これはこの試聴室の特徴かもしれない。バックコーラスは声のレイヤーが位置を変えながら重なっているように感じられ、音場の立体的な再現に一役買っていた。

 配信では、離れた場所から観るライブとは違い、映像付きでアーティストの表情までクローズアップされるため、より演奏者の気持ちに寄り添った体験ができるだろう。座り込み、寝転がりながら歌うシンガーのパフォーマンスなど臨場感あふれる映像をじっくりと見守りたい。

 聞きどころとしては、最後の間奏部でブラス系の楽器が回り込む感じなどに注目してほしいと思った。トップスピーカーの存在や上下方向の音の動きについてはあまり感じない気もしたが、入交氏をはじめとしたスタッフの説明によると、ハイトスピーカーやトップスピーカーを加えることで、距離が離れている左右のスピーカーとサラウンドスピーカーの音も自然につなげられるのだという。

 また、サラウンドコンテンツでは、収録した音そのものを鳴らすということではなく、会場で鳴っている音の雰囲気をどのようにイメージさせるか、そのためにどう音の配置を作っていくかがポイントにもなる。その意味では過度に高さを意識させず、前方のステージから音が鳴っている雰囲気を作ることが重要になるのだろう。

 ライブ終盤ではドラムの石若駿さん、ベースのマーティ・ホロベックさんにピアニストの上原ひろみさんが加わってのトリオ。ここでも個々の音が非常に明瞭に録音され、見通しよくプレーの雰囲気を伝えていることを実感できる。例えば「XYZ」では、5弦ベースのスーパープレーを間近に楽しめたり、こぶしで鍵盤を叩く激しい演奏の雰囲気、ドラマーのスティックさばきや足の動き、どの部分を叩いているかを真俯瞰でとらえた迫力ある映像など目を喜ばせる演出もいい。

 圧巻のプレーで(会場にいたであろう他の人と気持ちを同じにして)思わず映像に歓声を上げそうになった。

 続く「Return of Kung-Fu World Champion」は、ギターの西田修大さんが加わったカルテットの編成で、ぜひサラウンドで聞いてもらいたいコンテンツだ。シンセによる伴奏やエレキギターの音の共演はある意味ライブよりも凄いと感じさせる面があった。コミカルなファミコンサウンド風の音色もいい。

 筆者は実際の会場に脚を運んだわけではないので想像ではあるが、おそらくこういったサウンドは生の会場で聞くともう少し混沌とした雰囲気になるはずだ。細かい音をよく聞くという点ではライブ配信の方が歩がいい面もあるのではないだろうか。

 このように筆者は、たった4曲を聞いただけで、ライブの熱気や演奏の素晴らしさの虜になった。ライブ配信の現在、その最先端のクオリティーを知るためにも、ぜひ聞くべきコンテンツだあるのは間違いないだろう。特にサラウンドに関心があり、相応のシステムを所有している人は絶対に体験すべきコンテンツだ。

 もし読者の中に、実際のライブやこのコンテンツを体験した人がいるのであればその感想をSNSなどを通じて届けてほしいと思っている。

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