煙(蒸気)の力を使います
「人を煙に巻く(ひとを けむ/けぶ/けむり にまく)」というフレーズがあります。マジシャンもたまにそう表現されることもありますが、本来は「大げさに言いたて、相手をまどわせる」ことのようです。
マジックも他のエンターテイメントも、(良い意味で)観客を惑わせるのは確かなので、そんな表現が使われるのかもしれません。
今回は、そんな煙(蒸気)の力で衣類のシワの除去や脱臭、除菌をする「衣類スチーマー」の話です。
ただし、製品について大げさに言いたてたり、読者をまどわせたりして読者を「煙に巻く」ことはありません。安心してお読みいただければ幸いです。
前から欲しかった衣類スチーマー
実は、衣類スチーマーはずっと欲しかった製品です。しかし、使い勝手についてはやや半信半疑でした。「アイロンで代用できるし……」と思って、購入を見送っていたのです。
結論から言うと、買って大正解。雑な表現かもしれませんが「もっと早く買えば良かった」が感想です。ジャケットやシャツを着るのが仕事の一部なので、シワ伸ばしや脱臭など、ほぼ毎日使うほど活用しています。
ティファールの「DT8261J0」を選んだ理由
衣類スチーマーのメリットをまとめると、以下の3つになるでしょう。
◯アイロン台などを出す必要がなく、すぐに使える
◯シワ伸ばし、脱臭など効果がすぐに実感できる
◯スーツやジャケットなど、アイロンがかけにくい服にも使える
筆者が購入したのは、ティファールの「DT8261J0」。ヨドバシドットコムで、9630円で購入しました。選んだ理由は、上の3つの理由を実感できるからです。
DT8261J0の特長を挙げてみましょう。電源を投入してからおよそ25秒で使えること。蒸気の吹き出し量が多く短時間でシワが伸ばせること。コードが3mあり延長コードなどが必要ないこと……。
つまり、「すぐに使える、すぐに効果が実感できる、アイロンがかけにくい服にも使える」というスチーマーの良さを感じられる製品なのです。スチームアイロンから出るスチームとは段違いの蒸気量も、「さすが専用機!」と感心しました。
さらに、水タンクの取り外しがしやすく、給水や使用後にタンクの排水がラクな点も気に入っています。
衣類のシワは絡まった繊維。蒸気がシワを伸ばす理由
さて、スチーマーの蒸気がシワを除去する原理はシンプルです。シワは、洗濯などで布の繊維が絡まった状態で乾燥し、クセがついている状態。
そんな繊維に蒸気を当てることで、水分と熱で繊維が緩みます。そして、重力や衣類の端を手で引っ張ることなどで繊維を戻し、シワを除去します。
使い方は、ハンガーなどにかかった衣類のシワに蒸気を当て、シワを引っ張るように衣類の端を引くだけです。厚手の衣類や頑固なシワには、それを何度か繰り返します。
蒸気が匂いを取る原理
蒸気で衣類の匂いが取れるのは、繊維に付着した匂いの原因になる粒子を除去し、熱による原因菌の殺菌、さらに匂いを蒸散させるから。除菌できる原理はいうまでもなく、熱によるものです。
その効果は、汗の匂い、衣類の生乾きの匂い、カビの匂い、タバコ臭、加齢臭など、さまざまなシーンで発揮されるといわれています。
スチーマーを上手に使う5つのポイント
使って気がついた、スチーマーを上手に使う5つのポイントを挙げてみます。
1:スチーマーによりシワを取った衣類はわずかに湿っています。しばらく待ち、冷まして乾燥させた後に着用したり、収納したります。スチーマーを当てた直後の水分を含んだ衣類は、新たなシワがつきやすく、すぐに密閉された場所で保存すると逆にカビの原因になりかねません。
2:麻(リネン)、綿(コットン)100%ではない、混紡や化繊、シルクやウールは高温が苦手。蒸気を抑える専用のアタッチメントを付けたり、スチーマーの吹き出し口から衣類を離したりするなどして、長時間蒸気を当てないようにします。
3:スチーマーはアイロンの代用にはなりません。ノリを効かせ、シャツやブラウスなどをパリッと仕上げるのはアイロンのほうが得意。スチーマーが得意なのは、テカリやすい衣類のシワや部分的なシワを除去したり、気になる匂いを手軽に除去したりする作業です。
4:使い終わったスチーマーは水を抜いておくこと。スチーマーやスチームアイロンは、水を入れたまま片付けると内部の水が変質して衣類を汚すほか、スチーマー内部のサビや思わぬ水漏れなどの原因になることがあります。
5:蒸気そのものが高温なのはもちろん、蒸気の吹き出し口も、使用中や使用直後は高温になります。小さな子供やペットのいる場所では使用後もしばらく注意が必要です。
スチーマー番外編、「擬似煮洗い」が便利
「煮洗い」という洗濯方法があります。鍋などで沸かしたお湯で布を洗うこと。洗濯などで取れない、雑菌や汚れを取る昔からの方法です。
通常は、ふきんやタオルなどに用いられます。シャツなどの衣類を煮洗いする人もいますが、やはり、お気に入りのシャツを煮洗いするには抵抗があります。
しかし、シャツの襟元や袖の頑固な皮脂汚れには、擬似煮洗いがよく効きます。黄ばんだ場所に薄めた洗剤を軽く塗り、スチーマーで蒸気を数秒当てると、煮洗いと似た効果で汚れが溶け、衣類へのダメージも少なく済みます。とくに、時間が経って固着した、普段の洗濯では落とせない黄ばみ汚れがよく落ちます。
ただ、高熱に弱いポリエステルなどの化繊や、シルクやウールには避けた方がいいでしょう。
そのほかにも、スチーマーやスチームアイロンを使った汚れの落とし方はいろいろあるようです。動画投稿サイトなどでも紹介されているので、参考になさってみると良いかもしれません。ただし、衣類へのダメージなどに関しては自己責任でお願いします。
前田知洋(まえだ ともひろ)
東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、チャールズ英国王もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。
著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。
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