Microsoft Build Japan基調講演レポート
セブン銀行がAzure OpenAIで推進する、接客AIでの“ATMの顧客体験向上”
2024年07月03日 08時00分更新
日本マイクロソフトは、2024年6月27日と28日、米Microsoftの開発者向けカンファレンスBuild 2024の開催に続き、国内向け「Microsoft Build Japan」をオンラインで開催した。
本記事では、「Microsoft Cloudで切り拓く開発者のための次世代AI」と題した基調講演の様子をお届けする。
日本マイクロソフトの代表取締役社長である津坂美樹氏は、「Build 2024には20万人以上、本イベント(Build Japan)にも8000人以上の開発者が登録している。(経済産業省の調査によれば)生成AIの経済効果は2025年までに、中小企業では11兆円、日本全体では34兆円に達する。我々はすべての製品にCopilotを搭載し、“ユーザー企業の副操縦士”として成長を支援していく」と述べ、基調講演の幕開けを飾った。
生成AIをクラウドからデバイスに広げる「Copilot+ PC」が登場
メインスピーカーを担った同社の執行役員常務 クラウド&AIソリューション事業本部長である岡嵜禎氏が紹介したのが、Build 2024にて発表された「Copilot+ PC」だ。生成AIをクラウドからデバイスに広げる、“生成AI・Copilotレディ”なPCである。
Copilot+ PCが今後備える機能として、カメラやマイクに特殊効果を適用する「Windows Studio Effects」のAIによる機能強化や、リアルタイムで音声をテキストに変換する「Live Captions」、そして、PC上で表示したものを自動キャプチャーして後から検索できる「Recall(回顧)」などがアピールされた。
岡嵜氏は、「ネットワークに接続していない環境でも、生成AIを活用したユーザー体験を加速的に得られるのがCopilot+ PC」であると強調。非ネットワーク環境でもデバイス上のデータに基づいて、「RAG(検索拡張生成)」や、さまざまなデータを数値ベクトル化する「Vector Embedding」、文章を要約する「Text Summarization」などを利用できるようになるという。
セブン銀行:Azure OpenAIでATMにおける接客AIを開発中
基調講演では、セブン銀行やNTTデータ、経済産業省などの国内事例も披露された。
セブン銀行は、AIやデータの活用を推進する「コーポレート・トランスフォーメーション部」を設けており、同部内にはデータサイエンティストや生成AIのチーム(7月1日に正式発足)の他、データプラットフォームを担うチームや、データマネジメントオフィス、データサイエンスプログラムを受け持つチームが存在する。
セブン銀行の常務執行役員 コーポレート・トランスフォーメーション部、セブン・ラボ担当である中山知章氏は、「各チームを実務とうまく連携させながらデータ活用を推進している」と語る。
例えばデータサイエンティストチームは、AIを用いてATM設置候補の検索や現金需要予測を実現し、データマネージメントオフィスチームは、社内におけるAIの利用・開発を推し進める。生成AIチームは、コンタクトセンターでの生成AI活用のPoCに取り組んでおり、「顧客との応対を要約するもので、精度の有効度は約9割、ほぼ修正不要は約6割にまで達している」と中山氏。これらの開発には、Microsoft Azureが利用されている。
興味深いのは、生成AIを活用した「ATM接客システム」である。「テキスト同士ではなく音声同士(のコミュニケーション)を展望している」と中山氏。
察するに、Speech to Textで質問を聞き取り、Azure OpenAI servicesなどで分析・応答文章を生成して、Speech Serviceでアバターが音声で返答する仕組みのようである。基調講演開催後の説明によると、半年程度のPoCを実施しており、独自のアバター開発にも着手しているという。「消費者対応に向けて、ハルシネーションの低減など多角的に取り組んでいく」と今後の展開を述べている。