プロ野球の最年長最多勝記録保持者の下柳剛の料理から垣間見える投球スタイルこそが番組の醍醐味
6月10日に「第14回衛星放送協会オリジナル番組アワード」の最優秀賞が発表され、番組部門 ミニ番組では「『シモ’Sキッチン!』シモ流特大お好み焼き」(GAORA SPORTS)が受賞した。
同番組は、元プロ野球選手の下柳剛が自宅のキッチンから誰でも手軽に作れる“男の一人飯”を伝授するというもので、小学生の時から鍛えている料理の腕前を披露するほか、マウンドに立っていた時とは全く違う柔和な表情や、ユーモアあふれるトーク、主婦顔負けのクッキングポイントなどが見どころだ。
下柳は、阪神タイガースや日本ハムファイターズなど4球団で活躍し、最年長最多勝記録を持つ通算129勝の伝説の左腕。現役時代は、感情をあらわに鬼気迫る近寄りがたいイメージだっただけに、そのギャップが面白い。
だが、番組をよく観てみると、しっかりと“下柳らしさ”が表れているところこそがこの番組の肝だろう。優れた制球力と緩急をつけた投球術を駆使し、バッターとの駆け引きで勝負をするという繊細なスタイルを踏襲するように、料理も出来上がりでは隠れて見えなくなってしまう“手間”を惜しまず調理していくのだ。
例えば、「シモ流特大お好み焼き」の回では、「卵を黄身と白身に分けて、白身をメレンゲにする」「山芋は皮と実の間の栄養素を損なわないようにヒゲだけを落とす」「シーフードは塩水で解凍する」など、細やかな仕事が満載で、あれこれと手を入れてバッターを料理するさまと酷似している。
そんな野球と料理という全く違うように感じられる両者を、下柳だから可能な方法で結び付けているところこそが醍醐味ではないだろうか。加えて、料理の待ち時間の恒例企画「シモ‘Sイングリッシュ」もじわじわとくる面白さがあり、クセになるスパイスとなっているところもにくい。
伝説の左腕の料理という特技を、トークや繊細な仕事にも注目した制作者の調理も、演出が噛むごとに味が出てくる“濃さ”を生みだしている。