大阪大学と東京大学の研究グループは、2016年1月1日以降の量子コンピュータクラウドサービスの利用実態を調査した。2016年にIBMが量子コンピュータのクラウドサービスを開始して以来、量子コンピュータの専門家に限らず、ほかの分野の研究者や一般ユーザーも利用できる計算資源として普及しつつあるが、その利用実態を定量的に捉えた研究はまだなかった。
大阪大学と東京大学の研究グループは、2016年1月1日以降の量子コンピュータクラウドサービスの利用実態を調査した。2016年にIBMが量子コンピュータのクラウドサービスを開始して以来、量子コンピュータの専門家に限らず、ほかの分野の研究者や一般ユーザーも利用できる計算資源として普及しつつあるが、その利用実態を定量的に捉えた研究はまだなかった。 研究グループは査読前論文の投稿サイトであるarXiv(アーカイブ)から、2016年1月1日から2022年12月31日までに投稿された未査読論文のうちグールう、IBM、アイオンQ(IonQ)、クオンティニュアム(Quantinuum)、リゲッティ(Rigetti)の量子コンピューター実機を使った論文768本を抽出。量子コンピューターの用途や実際に利用した量子ビット数などの情報を集計した。 その結果、2016年以降に投稿本数が増加し、2022年に安定したことや、特にIBMの量子コンピューターを利用した論文が多いことが明らかになった。また、抽出した論文のうち半数以上が量子コンピューターを他分野に応用することを目指したものだった。 また、2022年の実利用量子ビット数は平均値が10.3で中央値が6だった。これは、現時点の量子コンピューターで多数の量子ビットを使って計算をすると、エラーやノイズの影響を受けるため、利用ビット数を少数にとどめることが多いためだと考えられるという。また、今回明らかになった平均値は大きな値ではないものの、2016年以降は着実に増加しており、ハードウェアの性能向上が量子コンピューター利用例の大規模化に向けた基盤になるとしている。 研究成果は6月1日、ネイチャー・レビューズ・フィジックス(Nature Reviews Physics)誌にオンライン掲載された。(笹田)