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脂肪肝の病理画像から発がんリスクを予測するAIモデル

2024年06月02日 10時08分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京大学と日本アイ・ビー・エムなどの研究グループは、脂肪肝の病理画像から発がんリスクを予測するAIモデルを構築した。

東京大学と日本アイ・ビー・エムなどの研究グループは、脂肪肝の病理画像から発がんリスクを予測するAIモデルを構築した。 肝臓の5%以上に脂肪が沈着した状態を示す「脂肪性肝疾患」の患者は、肥満人口の増加を背景として世界的に増加の一途をたどっている。肝がん発症リスクを判断する上で、線維化が最も重要な指標となるが、脂肪性肝疾患の場合は線維化が進展していない状態でも肝がんに至る例が多い。このため、多くの患者が適切な治療を受けられないまま肝がんの診断を受けることになっている。 研究には9カ所の施設が肝生検で採集した、2432人の脂肪性肝疾患患者のデータから、生検後7年以内に肝がんを発症した46人と7年以上肝がんを発症しなかった639人のデータを抽出して利用した。生検を実施した施設ごとに異なる染色法や時期の影響を排除するために、生検を実施した施設と時期を合わせた58例の肝生検標本画像を256×256ピクセルのタイルに分割し、2万8000枚の画像を生成。この画像を使って深層学習モデルを学習させ、AIモデルを構築した。このモデルの正解率は82.3%で、AUCは0.84となり、従来の標準的な指標である線維化を利用したモデルと同等の成績を記録した。 さらに、説明可能なAI技術の一種である Grad-CAM++を利用し、構築したAIモデルが病理画像のどの部分に注目しているのかを分析した。その結果、線維化のほかに細胞異型、核細胞質比の上昇、炎症細胞浸潤を肝がん発症高リスク例の特徴として認識していることが明らかになった。これらの所見はいずれも発がんに関連する病理学的特徴ではあるが、経験や感覚に基づく暗黙知であり、ヒトの目では見過ごされがちだという。 研究成果は5月20日、ヘパトロジー(Hepatology)誌にオンライン掲載された。

(笹田)

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