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生命の必須元素「リン」は白色矮星で作られる

2024年05月29日 06時51分更新

文● MIT Technology Review Japan

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国立天文台(NAOJ)と西オーストラリア大学の共同研究チームは、遺伝子を合成するのに不可欠な元素であるリンが重い白色矮星で起こる新星爆発で大量に生み出されることを発見した。さらに、その爆発頻度、つまり宇宙へのリン供給率が、46億年前の太陽系誕生時は現在より高かったことも明らかにした。

国立天文台(NAOJ)と西オーストラリア大学の共同研究チームは、遺伝子を合成するのに不可欠な元素であるリンが重い白色矮星で起こる新星爆発で大量に生み出されることを発見した。さらに、その爆発頻度、つまり宇宙へのリン供給率が、46億年前の太陽系誕生時は現在より高かったことも明らかにした。 ビッグバン直後の宇宙には水素とヘリウムだけが存在し、その後、恒星の内部で起こる核融合反応や、重い恒星が引き起こす超新星爆発で合成された原子量の大きな元素が、宇宙にまき散らされた。ただし、地球型生命に欠かせない必須元素の一つである「リン」については、太陽系内に存在するリンの量を、超新星爆発による合成量だけで説明するのは難しかった。 研究チームは今回、太陽の7~8倍という白色矮星になる星としては最も重い星が起源の「重い白色矮星」に注目。酸素、ネオン、マグネシウムから構成される重い白色矮星に由来する新星(「酸素・ネオン新星」と呼ばれる)の爆発現象で、リンが他の元素とは異なり桁違いに多く作られることを見出した。そして、酸素・ネオン新星が10億年以上の間に何度も繰り返し発生することを計算に入れると、その最終的な合成量は超新星を大きく凌駕することがわかった。 同チームはさらに、元素の存在量の変化を再現するモデルを作成。このモデルから、他の元素に対してリンが存在する量の比率が、およそ80億年前の宇宙で最も高かったことに、「重い新星」が大きく寄与していたことが分かった。 リンの量の時間変化を再現する今回のモデルは、地球での生命誕生の謎を解く鍵としての知見の一つになることが期待される。研究論文はアストロフィジカル・ジャーナル・レターズ(Astrophysical Journal Letters)のオンライン版に、2024年5月10日付で掲載された

(中條)

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