信州大学、慶應義塾大学、同大学発スタートアップのハートシードの共同研究チームは、臨床治療用のヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)から心筋球を作製し、心筋梗塞を発症させたカニクイザルの心臓への移植を実施。移植した心筋細胞を長期に渡って生着させ、サルの心機能を回復させることに成功した。
信州大学、慶應義塾大学、同大学発スタートアップのハートシードの共同研究チームは、臨床治療用のヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)から心筋球を作製し、心筋梗塞を発症させたカニクイザルの心臓への移植を実施。移植した心筋細胞を長期に渡って生着させ、サルの心機能を回復させることに成功した。 研究チームはまず、臨床用のヒトiPS細胞から臨床グレードの培養液を用いて、高純度の心筋細胞(主に心室筋)を製造し、微小心筋組織塊(心筋球)を作製した。次に、心筋球を細胞生産場所である慶應大から230キロメートル離れた動物施設まで4℃下で約4時間かけて輸送し、生存率が保たれていることを確認したうえで、心筋梗塞を発症しているカニクイザルの心臓に移植。12週間後に組織学的解析により、移植心筋細胞の長期生着および移植後の成熟化を確認した。 同チームがCTと心エコー検査を実施して心機能を評価したところ、心筋球移植後の不整脈の発生頻度は極めて少なく、傷害心臓の機能を回復できていることがわかった。今回の経過により研究チームは、ヒトiPS細胞由来再生心筋細胞を心臓に直接移植して心不全を改善する治療法がより臨床的に現実的なものになったと考えられるとしており、ヒトを対象とした臨床治験をすでに開始している。 研究論文は、米国心臓協会の科学雑誌「サーキュレーション(Circulation)」オンライン版に、2024年4月26日付けで掲載された。(中條)