海洋研究開発機構、東北大学、気象庁気象研究所などの共同研究チームは、大気中メタン濃度の変化に対し、化石燃料および微生物起源のメタン放出がそれぞれどのように影響したか観測データとモデルを組み合わせて解析する新たな手法を開発。1990年代から2010年代にかけて微生物起源のメタン放出が顕著に増加しており、廃棄物埋め立ておよび農業・畜産業の寄与が75%を占めることがわかった。
海洋研究開発機構、東北大学、気象庁気象研究所などの共同研究チームは、大気中メタン濃度の変化に対し、化石燃料および微生物起源のメタン放出がそれぞれどのように影響したか観測データとモデルを組み合わせて解析する新たな手法を開発。1990年代から2010年代にかけて微生物起源のメタン放出が顕著に増加しており、廃棄物埋め立ておよび農業・畜産業の寄与が75%を占めることがわかった。 研究チームは今回、メタン(CH4)の放出源はそれぞれ特徴的な同位体比を持つことに着目。メタン濃度に加えてメタン同位体比を大気化学輸送モデルに新たに導入し、過去30年間の大気中のメタン濃度の変動の要因となった主要な放出部門を特定した。 その結果、特に1990年代から2000年代初頭に化石燃料起源のメタン放出が顕著に減少し、その後はほぼ一定であったことが明らかになった。さらに1990年代から2010年代にかけて微生物起源のメタン放出が顕著に増加しており、その大部分は廃棄物埋め立てと畜産によるものであることが判明。湿地からのメタン放出は年々の変動に大きく寄与しているが、全放出量の増加に占める割合は比較的小さいこともわかった。 これらの分析結果は、1990年代から2010年代にかけて石油および天然ガス、シェールガス採掘に伴うメタン漏出の増加を指摘する既存の推定結果とは異なるものであり、将来における、より効果的な温暖化の緩和策立案に資する情報となることが期待される。研究論文は、コミュニケーションズ・アース・アンド・エンバイロンメント(Communications Earth & Environment)に2024年4月17日付けで公開された。(中條)