東京工業大学の研究チームは、超伝導の前兆現象である微弱な「ゆらぎ」を、熱電効果により検出することに成功。2次元超伝導体(原子レベルの薄さの超伝導体)の異常な金属状態の起源が、量子的なゆらぎが最大となる量子臨界点の存在によることを実証した。
東京工業大学の研究チームは、超伝導の前兆現象である微弱な「ゆらぎ」を、熱電効果により検出することに成功。2次元超伝導体(原子レベルの薄さの超伝導体)の異常な金属状態の起源が、量子的なゆらぎが最大となる量子臨界点の存在によることを実証した。 研究チームは今回、超伝導体の熱電効果(熱エネルギーと電気エネルギーを交換する効果)を、超伝導転移温度よりはるかに高温から絶対零度付近の極低温までの広い温度範囲で、広い磁場にわたって測定。超伝導のゆらぎを選択的に検出することで、温度と磁場に対する超伝導のゆらぎの全貌を明らかにした。 さらに、2次元超伝導の分野で30年来の未解決問題であった磁場中の異常な金属状態が、「量子臨界点」の存在に起因することを実証した。量子臨界点とは、絶対零度において磁場などのパラメータを変化させたときに起こる相転移点のことであり、そこでは量子的なゆらぎが最も強くなる。 2次元超伝導の性質は、超伝導のゆらぎから大きな影響を受ける。特に量子的なゆらぎはさまざまな興味深い現象を引き起こすが、従来の電気抵抗測定では、ゆらぎの信号と電子の散乱の信号を区別できなかった。熱電効果測定を用いた今回の研究の結果は、超伝導体が示す熱電効果の標準データともなるとしている。 研究論文はネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に2024年3月16日付けでオンライン公開された。(中條)