京都大学、東京都健康長寿医療センター、東北大学の共同研究チームは、身体にとって悪玉とされる「活性酸素」が記憶の形成に必要不可欠であることを発見した。また、抗酸化物質として運動選手や一般大衆に用いられるビタミンEで活性酸素を除去すると、運動記憶が阻害されることも示した。
京都大学、東京都健康長寿医療センター、東北大学の共同研究チームは、身体にとって悪玉とされる「活性酸素」が記憶の形成に必要不可欠であることを発見した。また、抗酸化物質として運動選手や一般大衆に用いられるビタミンEで活性酸素を除去すると、運動記憶が阻害されることも示した。 研究チームは今回、活性酸素を吸収する作用があり、抗酸化物質としても知られるビタミンEを、マウスに通常の2倍量を8週間与え続けた。その結果、過剰のビタミンEを投与したマウスでは、小脳に依存する運動記憶が顕著に阻害されていた。また、活性酸素を消去する酵素をマウスの小脳に注入して、小脳限定的に活性酸素を除去したところ、ビタミンE過剰投与と同様に運動記憶が阻害されることがわかった。 同チームはさらに、「活性酸素イメージング」と呼ばれる手法を用いて、実際に運動学習やシナプス可塑性が起こる時に活性酸素が作られることを確認。従来、悪玉因子とされていた活性酸素が、小脳が司る運動記憶に関与することを示した。 活性酸素は老化や生活習慣病の原因物質として知られる一方で、生体内でも酵素の働きにより積極的に産生されており、生理的な役割も担うと推測されている。脳でも活性酸素を作る酵素の存在が示されていたが、記憶などの脳機能への関与は不明だった。 研究論文は、国際学術誌リドックス・バイオロジー(Redox Biology)に2024年2月1日に、オンライン掲載された。(中條)