佐々木喜洋のポータブルオーディオトレンド 第264回
Noble Audioの「XM-1」を聞く、MEMSスピーカー採用イヤホン第2弾、有線接続ならではの高音質
2024年03月10日 17時00分更新
本連載でも以前取り上げた、Noble AudioのもうひとつのMEMSドライバー搭載イヤホン「XM-1」が3月1日に発売された。XM-1はUSBデジタル接続の有線イヤホンだ。実売価格は12万円弱。量産前のバージョンで試聴した。
USB接続で使用、金属製シェルの質感も高い
XM-1は、xMEMSのCowellと口径8.3mmのダイナミック型ドライバーを搭載したハイブリッドイヤホンだ。ドライバー構成はFALCON MAXと似ているが、ダイナミック型ドライバーはFALCON MAXとは異なる。ユニバーサル形状のアルミニウム製シェルが採用されている。
イヤホン端子はUSB Type-Cで端子内にUSB DACが内蔵されている。MEMSドライバーは昇圧が必要なので、FALCON MAX同様、昇圧アンプ「Aptos」を搭載している。このAptosも端子内にあるようで、そのためのバイアス電圧の線が信号線とは別に設けられている。結果、ケーブルには4本の信号線が伸びている。イヤホン側の端子は独自形状だが、理由のひとつだろう。JH Audioと互換性がありそうな4ピン端子だが、他社ケーブルを取り付けることはできない。
付属イヤーピースはノーマル/ダブルフランジ形状があり、合計6ペア。ほかにキャリングケースとUSB Type Cの延長アダプターが付属している。これはケーブルをうまくさせない場合に、使うものだ。
MEMSスピーカーらしい繊細な表現としっかりとした低域
イヤホン本体は金属製(アルミ)で高級感があり、とても剛性が高いように見える。ノズルもステンレス製だ。電波を遮蔽する金属シェルは、ワイヤレスイヤホンでは採用しにくい。つくりのいいシェルもFALCON MAXとの差別化ポイントとなるだろう。
シェル形状はユニバーサル型で耳にフィットする。イヤホンとケーブルをつなぐ端子はネジでロックするしっかりとしたもの。ケーブルは太いが、滑らかで取り回しは悪くない。
まずiPhone 15 Pro Maxで試聴した。全体の傾向はモニター的なものではなくリスニング寄り。低音の誇張感が多少あるが、躍動感があってパワフルなサウンドだ。低音は豊かで力強いパンチがあり、量感たっぷりのベースサウンドを楽しめた。ダイナミックドライバーの口径自体はFALCON MAXよりも小さいのだが、低音の量感はFALCON MAXよりもある。
低音が多めに出ているが、ヴォーカルはそれに隠れず明瞭に聞こえる。声のかすれなどな細やかな表現も堪能できる。これはWizardことジョン・モールトン氏の手腕がなせる技というべきかもしれない。特に女性の声が魅力的に聞こえる。
中域から高域にかけては、FALCON MAXにも似て、どこまでも上に伸びていくような高い音と鮮明な楽器音表現を楽しめた。解像力が高く、古楽器の細かな鳴りも再現することができる。
音場再現も立体感があり、豊かな低音域と合わせて音楽に迫力をもたらしている。これはMEMSスピーカーの特性として左右の製造誤差が少ないという点も寄与していることだろう。
MacBook Airでも試聴してみた。DACがイヤホン側にあることもあり、音質はiPhoneでの試聴と大きくは変わらない。ノートパソコンで、スティックDACを使用せず、高音質を楽しめる使い勝手はとてもいい。
ちなみに、MacBook Airで使用した際に、Audio MIDIアプリをみると、内蔵のDACは384kHz対応であることがわかる。パソコンで使用する際にはアプリ側で音質調整も可能なので、スマホよりも柔軟に使用できるだろう。
Noble Audioと傾向は近いがより高音質
音の傾向はFALCON MAXに似ているが、全体的なレベルはFALCON MAXよりもかなり高いと感じた。有線イヤホンを使うことのアドバンテージであると言える。
FALCON MAXも完全ワイヤレスイヤホンの中では、極めて高いレベルの音質だが、やはりサイズや伝送コーデックなど、ワイヤレスイヤホンならではの制限は仕方がない。XM-1はそうした制限を取り払って、限界を広げた有線イヤホンと言えるだろう。
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