グローバルでも注目を集める日本発の取り組み、このタイミングで協業を深化させた理由
SB C&SとDropboxが立ち上げた「Dropbox CoE」、背景と成果を聞く
提供: Dropbox
Dropbox JapanとSB C&Sは昨年(2023年)9月、SB C&S内にDropbox製品の専門チーム「Dropbox Center of Excellence(以下、Dropbox CoE)」を立ち上げた。これまでの協業関係をさらに強化し、DropboxからSB C&SのCoEメンバーに製品についての専門的なスキル/ノウハウをトランスファー(継承)することで、より多くの顧客企業における業務効率化や製品利用の高度化をサポートするのが狙いだという。
なぜこのタイミングで協業関係を強化することになったのか、実際にCoEではどんな取り組みをスタートしているのか、今後の展開にどんな期待をしているのかなど、今回はDropbox CoE立ち上げを主導したSB C&S 執行役員の守谷克己氏、Dropbox Japan 社長の梅田成二氏に聞いた。
販売パートナーのSaaSビジネスを支援する専任組織、契約管理システムを用意
――まずは現在、SB C&Sが展開されているSaaSビジネスの概要を教えていただけますか。
SB C&S 守谷氏:SB C&SはITディストリビューターとして、国内およそ1万3000社の販売パートナーとお取り引きさせていただいています。かつてはパッケージソフトウェア製品の流通がメインでしたが、近年はSaaSの取り扱いも増えました。
SB C&Sが取り扱うSaaSはいわゆる“ホリゾンタルSaaS”、顧客企業の業種に関係なく必要とされる業務SaaSです。具体的には「コラボレーション」「HR」「バックオフィス」「セールス&マーケティング」という4つのジャンルに力を入れて、販売パートナーの営業活動をご支援しています。
SaaSの販売は急速に伸びています。まずは新型コロナのパンデミックをきっかけとしてWeb会議や共有ストレージといったコラボレーション系のSaaSが、またそれが落ち着いた後は、電帳法(電子帳簿保存法)改正やインボイス制度開始などに対応するためにバックオフィス系のSaaSが、それぞれ多くの引き合いをいただいています。
従来の売り切り型のソフトウェアビジネスと比べると、月単位、年単位で契約するサブスクリプション型のSaaSビジネスは、売上が一見小さく見えます。しかし、たとえば5年間といった期間で見ると、SaaSのビジネスも決して小さくはありません。最近では、販売パートナーでも徐々にそれをご理解いただけるようになっていると感じています。
――SaaSビジネスにおける「販売パートナーの支援」というのは、具体的にはどんな活動内容なのでしょうか。
守谷氏:国内市場で出回っているSaaSは7000種類、8000種類に及ぶと言われます。販売パートナーが、エンドユーザーである顧客企業のニーズに合った最適な提案をしたいと考えても、どのSaaSを選べばよいのかがわからない。
そこで、われわれがSaaSを“吟味”したうえで、販売パートナーと一緒になってお客様にご提案できる、そのようなSaaS専門組織を作ろうと、2022年10月に「Cloud Service Concierge」を立ち上げました。マーケティング、販売パートナーのご支援、案件提案のご支援、カスタマーサクセスといった担当スタッフで構成しています。
もうひとつ、顧客企業が1社で多数のSaaSを利用されることや、サブスクリプション型で契約が長期にわたることを見据えて、「ClouDX(クラウディーエックス)」という契約管理プラットフォームを開発し、販売パートナーにご提供しています。
簡単に言えば、ClouDXはサブスクリプション契約/更新管理のためのプラットフォームです。たとえばエンドユーザーのお客様の契約更新時期が近づくと、販売パートナーに自動で通知してご連絡を促すなど、受発注からサービス開通、契約情報、課金、請求までの機能を備えています。
このようなサポートを販売パートナーにご提供することで、「SaaSのことならばSB C&Sに聞けば対応してもらえる」と、そう思っていただけるような環境づくりの取り組みを進めているところです。
専任チームとしてのスキルとノウハウを備えるDropbox CoE、活動成果は
――そうした動きの中で、昨年(2023年)9月にDropbox CoEの立ち上げとなりました。どういう経緯でCoEの設立に至ったのでしょうか。
Dropbox 梅田氏:もともとSB C&Sさんは、Dropboxが日本法人を立ち上げた2015年から、マスターディストリビューターとして日本国内でのビジネス展開を後押ししていただいてきました。今回のCoEは、その協業をさらに強化する取り組みです。
CoE立ち上げのきっかけは、大きく2つあります。 ひとつは、Dropboxが日本でビジネスを始めた2015年当時と比べて、ビジネスのボリュームが大きくなったことです。もともとはDropbox Japanの中のチームが、プリセールスから販売、カスタマーサクセスを担当する、自己完結したかたちでビジネスを進めてきました。しかし、日本でも案件の数が増えたことで、われわれの人員だけではカバーしきれなくなってきました。
ここに、もうひとつのきっかけが加わります。昨年の9月のことですが、コロナ禍が明けて再び米国と行き来しやすくなったので、SB C&Sさんから「久しぶりに幹部どうし、フェイストゥフェイスでお会いしたい」とお話をいただきました。せっかくエグゼクティブどうしが会うのであれば、何かそれにふさわしいトピックを考えたいと、SB C&Sさんとわれわれで深い議論が始まって。
この2つのタイミングがかみ合って、日本でDropbox CoEを立ち上げようという話になりました。
守谷氏:SB C&Sとしても、いま一度この機会に体制を整えることで、Dropboxのビジネスをさらに拡大していこうと考えました。先ほどお話ししたCloud Service Conciergeは、プリセールスやカスタマーサクセスの機能を備えており、SaaSベンダーに成り代わってご提案やサポートができる体制というのがコンセプトですので、ここにDropbox CoEの機能を盛り込むことができそうだ、と考えたわけです。
――CoE立ち上げにあたっては、どのような取り組みをされたのですか。
梅田氏:CoEでは、Dropboxの導入を考えられているお客様、あるいはすでにご利用されているお客様に、われわれと同じサービスレベルを担保しなければなりません。そこで、プリセールスやカスタマーサクセスに関して、Dropbox Japanの担当者からCoEのメンバーへのスキルトランスファー、ノウハウの共有といったことを行いました。
――つまり“Dropboxに成り代わって”、CoEメンバーが新規案件の提案や活用方法のアドバイスなどができるようにした、ということですね。実際の案件提案では、CoEメンバーはどのように関わるのでしょうか。
守谷氏:それはケースバイケースです。全国の販売パートナーからお問い合わせをいただくケースもあれば、Cloud Service ConciergeのWebサイトに設けた窓口(「Dropbox相談センター」)から直接お客様にお問い合わせいただくこともあります。また、Dropboxさんから対応してほしいとご依頼いただくこともありますね。
――CoEとしての活動内容は、問い合わせ対応や案件提案のほかに何かありますか。
梅田氏:CoE立ち上げ後、新機能や高度な活用方法をご紹介して、Dropboxをさらにご活用いただくためのウェビナー「Dropbox University」を共同で開催してきました。今年(2024年)の1月は初めてSB C&Sさんの単独開催となりましたが、120名ほどのお申し込みをいただき、かなり良い手ごたえを感じました。今後は3カ月に1回、SB C&Sさん主導により定期的に開催していく予定です。
――活動開始からまだ数カ月ですが、CoEを立ち上げた成果は出てきていますか。
守谷氏:あらためてDropboxさんからトレーニングしていただいたことで、CoEメンバー一人ひとりのスキルレベルは間違いなく上がっていると思います。カスタマーサクセスのほうでも、スキルトランスファーをいただけたことで、実際にお客様への支援がスタートしています。
梅田氏:先ほどCoE立ち上げのきっかけとして、案件数が増えてわれわれだけではカバーしきれなくなったとお話ししましたが、この課題を解消できるような成果も生まれてきています。昨年末には中規模の案件、500万円規模の案件をSB C&Sさんとパートナーさんにお任せして、無事にクローズできました。
その規模の案件までCoEにお任せできると、Dropbox Japanとしては非常に楽になりますし、より規模の大きい案件や、今後出てくるであろうAIなどの新たな案件に集中できるようになりますから。
守谷氏:われわれとしてもやはり、Dropboxさんから「もっと頼りたい」と思っていただけるような、そんなチームにしたいですね。
――なるほど。これからさらに成果が上がりそうですね。
守谷氏:わたしと梅田さんの間もそうなのですが、SB C&SとDropboxさんとのコミュニケーション機会が圧倒的に増えました。現在の製品についての情報だけでなく、これからDropboxさんがどういった方向に進むのかといったことをわれわれも理解して、一緒にビジネスプランを考えるようなこともやらせていただいています。
梅田氏:実は昨年末、ほぼ毎週守谷さんと打ち合わせをさせていただいて、今後の成長に向けた“5カ年計画”を一緒に作ったんです。法人契約は締結まで数か月を要することも多いので、5年後も見据えた目標を共有することで動きやすくなりました。Dropbox Japanには、たとえば地方の建設業や自治体といった「攻めるところ」がまだ多く残っている。ただし、そこを攻めていくためには、導入いただいているお客様に毎年きちんと更新していただくという「守るところ」も必要です。この両方をカバーするうえで、SB C&SさんのCoEやCloud Service Conciergeが「エンジン」になるということを、5カ年計画を作りながら再認識しました。
Dropbox CoEは“勝利の方程式”、グローバルにも注目を集める
――Dropbox CoEの立ち上げは日本独自の取り組みだそうですが、グローバルでの反応はどうですか。
梅田氏:Dropbox社内でも「とてもユニークな取り組み」として注目されています。と言うのも、SB C&Sさんのように「Dropbox製品にバリューを付加して販売する」取り組みをされているディストリビューターは、海外にはあまりいないんですね。
グローバルのセールス部門トップも「こんなに面白い取り組みはグローバルに広げたい」と言っていまして、実は各国のディストリビューターでも、同じような取り組みを始めようとしています。実際、今年の2月にサンフランシスコで開催したグローバルのセールスキックオフには、SB C&Sさんをお呼びして、全世界のセールスに対してどんな取り組みをしているのかをご説明いただきました。
――日本発の取り組みが、グローバルで模範的な事例になったわけですね。
梅田氏:そうです。本社の側では、この新たなモデルをひとつの勝ちパターン、“勝利の方程式”だと認識しているようです。昨年末に入社したChief Customer Officer(CCO、最高顧客責任者)も「まずは日本のやり方を学びたい」と言ってくれましたし、日本と同じようなマーケットのビジネス構造を持っている韓国やヨーロッパのメンバーも「詳しく教えてほしい」と連絡をくれています。
もちろん最初からすべてがうまくいくわけではありませんが、失敗した部分やその改善策も含めて、本社には透明性を持って共有しています。SB C&Sさんとうまく成果を出しながら、本社からのサポートも得て、Dropbox CoEの取り組みを大きく広げていきたいですね。
――それでは最後に守谷さん、SB C&Sとして今後のDropboxに期待することは何か、教えてください。
守谷氏:製品的には、やはり「Dropbox Dash」といった、AI関連の製品を日本でもいち早くリリースしてほしいですね。
同期が速いとか、ファイルあたりの容量に制限がないとか、全文検索ができるとか、Dropboxそのものがとてもアピールできる製品だと考えていますが、そこにAIの力が加わることで非常に便利になるはずです。自然言語で質問をしたら、必要な情報がどのファイルにあるかを教えてくれる、さらにはファイルを開くことすらなく答えを教えてくれる――というのはとてもいいですよね。
ビジネス面では、Dropbox CoEを立ち上げることができましたので、今度は一緒にしっかりと実績を作っていくことです。Dropbox本社からの期待にも応えたいですし、それ以前にDropbox Japanの皆さんからの期待にも応えられるように、努力していきたいと思います。