レノボは“AI for All”であらゆる場所のワークロード、業種のAIプロジェクトを支援
CIOの69%が、AIワークロード運用に“非”パブリッククラウドを選択 ― レノボCIO国際調査
2024年03月01日 08時00分更新
レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ(レノボ)は、2024年2月27日、「AI TechDay Japan 2024」の開催に合わせて、生成AIにフォーカスしたCIO国際調査に関する記者説明会を開催した。
レノボは、IDCの協力のもと実施した、生成AIのビジネス活用における現状や課題を明らかにするレポート「CIO Playbook 2024 - It's all about Smarter AI」の調査結果を公開。日本を含むアジア太平洋地域の12か国、6つの業種における900人以上のCIOおよび意思決定者(ITBDM)を対象としており(うち日本は150人)、2023年に続く調査になる。
アジア太平洋地域のインサイト:CEOとCIOで異なる優先事項
まずは、レノボのインフラストラクチャソリューショングループ(ISG) CMOであるフリン・マロイ(Flynn Maloy)氏より、アジア太平洋地域全体のインサイトが披露された。最初のインサイトとして「CEOとCIOはそれぞれ違った優先事項やAIに対する期待を持っている」とマロイ氏。
CEOのビジネスの優先事項をみてみると、2023年の調査ではランク入りしていなかった生成AIなどの「新興テクノロジーの活用」が1位に。2位には「顧客エクスペリエンス・満足度(前年4位)」、3位には「収入と利益の成長(前年1位)」、4位には「サステナビリティの向上(前年9位)」、5位には「ビジネスの機敏性と責任(前年7位)」が続いた。
一方で、CIOのテクノロジー優先事項の1位は「デジタルインフラ管理とセキュリティの自動化」に。2位には「AI/MLワークロード向けHPC基盤」、3位には「ランサムウェアやマルウェア攻撃に対処するサイバーレジリエンシー向上」、4位になって「生成AI」が登場する。ちなみに5位は「マイクロサービス指向アーキテクチャに向けたインフラの最新化」だ。
マロイ氏は、「ビジネスサイドとテクノロジーサイドからは生成AIに対する認識が異なり、CIOは段階的に、計画的に、AIを導入していきたい」と指摘する。
続いてのインサイトは、AI投資の大幅増加だ。
AIテクノロジーに対する支出は、前年と比較して45%増加する見通しとなる。欧米の調査では、さらに多い支出が見込まれているという。投資中・予定のテクノロジーのトップ3は、1位が「生成AI」、2位が「機械学習」、3位が「ディープラーニング」とAI関連が並んだ。
そして、マロイ氏が調査をして良かったというのが、AIワークロードをどこで運用したいかだ。「パブリッククラウド」が31%を占める一方で、「従来型DC」が13%、「プライベートクラウド」が28%、「ハイブリッド」が28%となり、非パブリッククラウドで運用したいという回答が69%にものぼった。
マロイ氏は「これまでAIを加速してきたのはパブリッククラウドだが、アジアのCIOはパブリッククラウド以外で運用したがっている。さらに、ヨーロッパでは非パブリッククラウドが83%とこの傾向がさらに強くなり、セキュリティや性能、プライバシーの問題が重要視されていることを示す」と強調する。
3つ目のインサイトは、テクノロジー課題だ。
CIOは、テクノロジーにおける課題として、1位に「サイバーセキュリティ・データプライバシー」、2位に「DX」、3位に「データ管理・分析」、4位に「顧客エクスペリエンス」、5位に「人材獲得と定着」を挙げる。「ビジネスリーダーがAIにワクワクする一方で、CIOはどこで運用するのか、どうやってセキュリティを担保するのか、まだまだ悩んでいる。特に、AI関連の人材確保においては、45%のCIOが困難に直面している」とマロイ氏。
また、組織にとってのAIの重要性を尋ねると、9%は「業務の妨げ」と単なる不要なものだと回答。そして45%は「必須要因」として、46%はビジネスの方法を変える特別な「ゲームチェンジャー」だと捉えている。
生成AIへの投資については、「投資済み」は13%にとどまる。その中でも韓国やインドは20%以上が投資開始している。「アジアはAIに対して興味があるが慎重。だが2024年こそアジアでAIの投資が本格化する」とマロイ氏。2024年に投資予定という回答は75%という結果となった。
アジア太平洋地域の“業界別”インサイト:製造業はエッジがAI導入をドライブ
続いてアジア太平洋地域の業界別のインサイトについて、レノボのインフラストラクチャソリューショングループ(ISG) アジア太平洋事業責任者であるスミア・バティア(Sumir Bhatia)氏より解説された。バティア氏は、「AIに対する関心は、どの業界も高い。特に政府機関は、生成AIをゲームチェンジャーと捉え、医療系は生成AIの投資も他のテクノロジー同様に慎重だ」と説明する。
まず製造業をみてみると、特にエッジでAIの採用が進んでいるという。エッジコンピューティングの2024年の支出は、40%増加する見込みであり、AIに最も影響を受けたエッジのユースケースとして、1位に「工業オートメーション」、2位に「IoTデバイス管理」、3位に「リアルタイム分析および知見」が挙げられた。「製造業はサプライチェーンの領域含めてこれまでもAIを活用しており、アーリーアダプターといえる」とバティア氏。
製造業のAI投資は、12%が投資済みで、2024年に投資予定なのは75%となる。上位の生成AIのユースケースが、1位が「BI(ビジネスインテリジェンス)」で予測分析や処方的分析などで利用、2位が「生産性向上」で品質管理や欠陥検出などで用いられている。3位が「対話型AI」で、AIアシスタントを介した在庫管理などが挙げられる。
小売業では、12%が生成AIに投資済みで、82%が2024年に投資予定と、生成AIに積極的な業界となる。上位の生成AIのユースケースは、1位が「生産性向上」で顧客行動を基にした価格最適化などで利用される。2位は「対話型AI」でカスタマーサポートや注文追跡などに、3位が「BI」でリテールストアのヒートマップ作製などで用いられる。
最後に金融業だ。この業界もアーリーアダプターであり、20%が既に生成AIへの投資を開始しており、73%が2024年に投資予定だ。金融業界でのユースケースは人件費削減が中心となり、1位が「BI」で本人確認などに、2位は「対話型AI」でデジタルアシスタントや自動音声認識などに、3位は「生産性向上」で信用リスク分析や、引受業務などに利用される。
日本のインサイト:生成AIへの投資はわずか2%
最後に、日本におけるインサイトをレノボ・エンタープライズ・ソリューションズ 代表取締役社長である多田直哉氏が説明した。
日本の生成AIの投資は、2024年に投資予定とする回答が79%(アジア太平洋は75%)だった一方で、投資済みとしたのはわずか2%(アジア太平洋は13%)にとどまる。「依然として日本は慎重論が強い」と多田氏。
AI展開における課題として1位となったのは「ビジネス事例作り」で、ROIとして評価する/しないに関わらず、まずは事例作りを重視している慎重性が分かる。2位は「セルフサービス式AIツール使用のトレーニング」で、まだまだツール類が整っておらず、3位は「従業員からの仕事を脅かされるという懸念」となり、AIはいまだ過渡期だといえる結果となった。
このような状況を乗り越えて出てきている日本の生成AIのユースケースは、1位は監視・管理の領域の「BI」、2位は、分かり易い生成AIの活用である「生産性向上」、3位には、社内外のエクスペリエンスを向上する「対話型AI」が入っている。
“AI for All”でいかなる場所のワークロード、いかなる業種のAIプロジェクトを支援
レノボ ISG CMOであるマロイ氏は、「去年はまだAIにとって始まりだった。皆がスタートラインに立ち、これから何年間もAIの旅路を進むことになる。AIはこれから、学校や工場、小売と身近なところにやってくる。“AI for All(すべての人にAIを)”という視点だ」と調査を振り返って説明する。
また、AIはパブリッククラウドから始まったが、今後は知的財産の問題もあり、従来型DCやプライベートクラウドにも拡がっていく。レノボは、AIのワークロードがどこであれ、どの業種であれ、“AI for All”でAIソリューションをサポートしていくと意気込む。
レノボは、2014年にx86サーバー事業をIBMから買収、その後ISGグループとして成長を続けてきた。ビジネスは100億ドルにまで達し、サーバー市場で世界3位に、そしてIDCからはAIインフラストラクチャーにおいても3位と評価されている。
レノボは、AIレディなインフラストラクチャーによって、既に20億ドルの収益を得ており、過去の12億ドルのAIへの投資に続き、2023年から3年間で10億ドルの投資を行っていく。現在、80を超えるAIレディプラットフォームを有し、パートナーとして50を超えるレノボAIイノベーターズと連携、そして、エンタープライズAIソリューションを165以上展開し、現在、50以上の生成AIのPoCが進んでいるという。