2026年、三河安城地域に誕生!!「シーホース三河」新アリーナの「つかい方」「過ごし方」をみんなで考えよう 第8回
「アリーナのつかい方を考える」第5回つかい方ワークショップ開催
シーホース三河の新アリーナ誕生で、三河安城駅は新横浜駅のように!発表に向けて「つかい方」をブラッシュアップ
提供: 安城市
「アリーナのつかい方を考える」ワークショップ最終回
2024年2月18日(日)、安城市中心市街地拠点施設アンフォーレで5回目最後のワークショップが開催された。
2026年、愛知県の三河安城駅周辺にB.LEAGUE所属のプロバスケットボールチーム「シーホース三河」の新本拠地(以降はアリーナと表記)が完成する。約5000席の観客席、幅6mもあるコンコース等の設備に加え、完成後の拡張まで考えられたアリーナで、新しい三河のシンボルとして地域の活性化を担う存在としても期待される。それでは、B.LEAGUEのホームゲームが行われる日以外、つまり試合のない日にはアリーナをどのように活用していくのか。この「アリーナのつかい方」を、市民参加型で考えてもらい、実際に市民が主体的になってアクションを起こしてもらおうとの思いからスタートしたのが、このワークショップだ。
昨年(2023年)10月から今回まで行われた全5回のワークショップで、市民を中心に、行政と企業も力を合わせて、アリーナのつかい方についてアイデアを出し合ってきた。
学生や子育て世代など、さまざまな参加者が8〜10名程度のグループに分かれて、グループごとに意見交換。第1回では、普段の生活の中のワクワクする瞬間やホッとする瞬間について話し合い、第2回では、アリーナを日常と非日常に分けたつかい方について意見を出し合った。第3回では、これまでに出たアイデアをもとにテーマを決めるグループワークに加えて、シーホース三河のホームゲームをみんなで観戦。第4回では、グループごとに具体的なアイデアをまとめていった。
集大成となる今回は、第4回で決まったアイデアを用紙にまとめて、3月17日(日)に開催される「つかい方フォーラム」で発表する内容を固めるのがミッションとなる。
市民が世代を超えて夢を語り合った2時間
当日は、シーホース三河の佐古賢一シニアプロデューサーの挨拶からスタートした。佐古氏は冒頭、「これまでに皆さんに出していただいたアイデアは全部実現させましょう!突拍子もないことでもいいんです。皆さんがやりたいと思ったこと、全部やりましょう。」と、これまでのワークショップで出てきた数々のアイデアの実現に賛同。その上で、
「アリーナは間違いなく、安城市が自慢のまちになるためのツールになります。アリーナができた時、まちの風景も変わって、バスケットボールファンやたくさんの人が安城市に訪れる。そんなことを想像していただきながら、今日の最後のワークショップでアイデアを出してもらいたいなと思います!」と参加者を激励し、会場はスタートから大いに盛り上がった。
運営スタッフから発表イメージの説明の後、各グループでつかい方のブラッシュアップおよび発表に向けた資料作成が進められた。具体的には、4枚の用紙が用意され、1枚を1スライドとし、紙芝居仕立てで発表内容をまとめていくというもの。つかい方を連想させる写真やイラストを使用してもOKで、4枚以上のボリュームになっても問題なし。内容がまとめられた用紙を安城市および運営スタッフ側で清書し、当日の発表資料が完成する。
前回同様、今回も山崎製パン株式会社から協賛品として配られたお菓子を食べながら、楽しくワークショップが進められた。シチュエーションを伝えるために撮影するグループや、ネットでイメージ画像を検索するグループ、イラストに力を入れるグループなど、それぞれが真剣に取り組む姿が印象的だった。
約1時間のグループワークの後、グループごとにフォーラムでの発表者を決めて、発表に向けたロールプレイングを実施。フォーラムで1グループに与えられる時間は4分間。要点をまとめて、自分たちの情熱やアイデアを伝える必要がある。
数名の参加者にこれまでの感想やフォーラムに向けた意気込みなども聞いた。笑顔で話す姿から充実感が伝わってくる。
「全5回のワークショップ、すべてに参加してきました。正直、ずっと参加するつもりじゃなかったんです。最初は内容を理解しておらず、どんなものかなと思って、お試しのつもりで参加しました。でも、想像以上に楽しかったので、継続的に参加することに。子育てについて考えてくれる方々が多くてよかったです」(くんままさん)
「いろいろな世代の方と話ができて楽しかったです。私たちのグループでは、レンタルなど体験型のサービスをまとめました。当日は私たちが代表して発表することになったのですが、利用するイメージが分かりやすいと思いますし、高校生らしく精一杯伝えていきたいと思います」(さなさん/ゆーりさん/ななさん)
「エンジニアとして働いているんですけど、普段は接する機会がない方々と話すことが楽しくて、このワークショップに参加させてもらいました。グループで決まった『一人でも楽しめるアリーナ』を大きなテーマに、フォーラムではさまざまなアイデアを紹介します。画像生成を使った素材の用意や、AIによる発表なども考えています。すべて実現できるか分かりませんが、みなさんも楽しんでもらえる発表ができたらと思います」(たにさん)
各グループからどんな「つかい方」が提案されるのか。それはフォーラム当日のお楽しみだ。最後に振り返りおよび閉会の挨拶があり、最終回となるワークショップの全プログラムが終了。約2時間のワークショップは、あっという間に閉幕となった。
グループコーディネーターにとっても、ワークショップは「驚きと発見の連続だった」
これまでのワークショップを振り返るにあたって、忘れてはならないのが4名のグループコーディネーターの存在だ。Café&delica NEJIの村澤有紀子さん、株式会社夢花の代表を務める都筑拓さん、ママさんバンド フルーツキッズおよび寺子屋『Dear。。。』の渡邉裕子さん、名古屋産業大学准教授の今永典秀さん。この4名が市民を代表し、第1回から各グループをサポートしてきた。
最初の顔合わせの際に「(アリーナ誕生が)みんなのジブンゴトになるのか不安」と話していた村澤さん。
「グループで集まって話し合ううちに、すぐに不安は解消されました。私は子育て世代が多いグループを担当していて、このワークショップに参加していなかったらパパさんの意見を聞くことはあまりなかったと思います。意外と言ったら失礼ですけど、育児や子育ての環境について、皆さんがこれほど真剣に考えているとは思ってもいませんでした。また、せっかく安城に住んでいるんだから、自分が住んでいる町をより良く変えていきたい気持ちも感じました。本当に驚きの多いワークショップでしたね」
都筑さんは「みんなの目標は同じだった」と振り返る。
「これほど多くの方が継続的に参加されるとは思っていませんでした。たくさんの意見が出たので、それをグループごとにアイデアとしてまとめられるのか不安になったことも。でも、一人ひとりのアイデアを掘り下げていくと、表現方法が違うだけでテーマは共通していたんですよね。やりたいこと、あってほしいアリーナの姿、その本質は非常に似ています。それを実感できたワークショップでした」
三河安城を盛り上げる各種イベント等を企画する「つかう.meet」のメンバーでもある渡邉さん。地元をこよなく愛する一人だ。
「最初はコーディネーターが務まるのか不安でした。でも、皆さんと話しているうちに、みんなが求めているアリーナが想像できてきました。私自身、地域イベントの開催に関わっていて、皆さんと繋がれるのは素敵なことだと感じています。一人では実現できないことでも、誰かに相談したり頼ったりすればカタチになります。私自身も勉強になったワークショップでした」
ワークショップを通して「シーホース三河のファンになった」と話す今永さん。
「高校生中心のグループを担当してきました。最初は大人しい学生や、周囲に遠慮している学生がいました。でも、回を重ねるにつれて変化が見られました。楽しいことを誰かに伝えたい意識が生まれ、学生たちの成長も感じることができたワークショップです。フォーラムでは、学生の皆さんが力強い発表をしてくれるのではないかと期待しています。あと個人的なことですが、シーホース三河のファンクラブに入会するほどバスケが好きになりました。学生の皆さんだけでなく、自分自身の変化にも驚いています」
市民が投げた素晴らしいボール(アイデア)は、実現へ向かう
今後に向けて大切なのは「アイデアをカタチにしていくこと」だろう。ワークショップを講評してきた愛知学院大学の内藤准教授は「素晴らしいボールが投げられた」と話す。
「皆さんの積み重ねが見えたワークショップだと思います。自分の意見を発信するだけでなく、他の方の意見にも耳を傾ける姿勢が伺えました。これからは安城市やシーホース三河さん、アイシンさんの取り組みに期待しています。皆さんが考えたアリーナの継続的なつかい方を、『市民の方々だけでやってくださいね』では、正直なところ難しいと思います。いいアイデアが出ても実現しないケースは多いです。みんなが投げたボールを行政や企業がどう受け取って、それをどう返していくのか。そこに注目したいと思います」
一方、アリーナ事業を担当する株式会社アイシンの佐藤さんは「皆さんのアイデアを実現させていきたい」と話す。内藤准教授の言葉を受けて口にしたのではなく、これまでのワークショップを間近で見てきて思ったそう。
「ワークショップが始まる前から私たちもアリーナのつかい方について検討してきました。『特別なことをやらなきゃいけない』『機能を用意しなければいけない』それにとらわれていた時期もありました。でも、第1回のワクワクする瞬間やホッとする瞬間について話し合う姿を見て、少しずつ考えが変わっていきました。ワークショップを通して、皆さんから気づきをいただいた感覚です。フォーラムで発表されるアイデアに限らず、これまでにワークショップで見聞きしてきたアイデアをぜひ実現させたいと思っています」
アリーナの誕生で、三河安城駅は新横浜駅になれる!!
さまざまな参加者の意見や情熱が交わされたワークショップ。素晴らしい瞬間が多々あったが、ハイライトは佐古賢一シニアプロデューサーの挨拶だろう。熱いメッセージに参加者の多くが胸を打たれたはず。
「ミスター・バスケットボール」と呼ばれ、アイシンシーホース(現シーホース三河)でプレーし、日本代表でも活躍した佐古氏。現役引退後には広島や北海道のチームでヘッドコーチを務め、男子日本代表のアシスタントコーチも経験した。そんなバスケ人間だった佐古氏が「私にとっても貴重な体験でした」と、これまでのワークショップを振り返る。
「シーホース三河のシニアプロデューサーに就任した当初、会社(シーホース三河)に何を求められているのか理解できていない部分もありました。でも、地域の皆さんとの触れ合いを通して、少しずつ自分の役割が分かってきた気がします。指導者時代は家と体育館の往復がほとんどで、地域の方々との交流はチームイベントくらい。勝ち負けの世界でずっと生きてきました。それが今は、楽しい。楽しいと言っていいのか分かりませんが、こうしたイベントや試合会場で地域の方々と言葉を交わし、一緒に地域の未来を考えていける。いろいろな方と話すうちに『あ、素で付き合っていいんだ』と思いましたね」と、佐古氏はワークショップ後に話してくれた。
冒頭であった佐古氏の挨拶後、日本福祉大学の吉村教授は「佐古さんの挨拶を聞いてワクワクしました。これが共感する伝え方だと思います」と絶賛。吉村教授曰く、共感を呼ぶ伝え方のポイントは「自分の言葉で伝えること」「経験が織り込まれていること」「楽しそうに伝えること」などを挙げた。そして「佐古さんの挨拶をヒントに、用意した資料に縛られることなく、フォーラムで堂々と発表してほしいです」とアドバイスも添えた。
佐古氏の言葉で印象的だったのが、閉幕の挨拶で述べた「三河安城駅は新横浜駅になれる」のフレーズ。冗談に聞こえるかもしれない。くすっとした笑いもあった。しかし、佐古氏は真剣な表情で続けた。
「僕は横浜出身です。小さい頃から新横浜駅を見てきました。新横浜駅の周辺は山ばかりで開発が進まず、開通当初はこだましか停車しませんでした。三河安城駅と同じです。それが今では横浜アリーナや高層ビルができ、町の景色はがらりと変わりました。未来を見れば夢が膨らむと思います」
町の風景が変わる――その言葉に期待している方々は多いはず。そして、風景を変えていくには、行政や企業だけでなく、市民の力が必要だ。アリーナの誕生、そして日常的にアリーナが賑わうことは、その第一歩となる。
3月17日(日)の「つかい方フォーラム」では、みんなが考えたアイデアがいよいよ発表される。アリーナ計画を通して、行政や企業、市民が一帯となって盛り上がりを見せる安城市。どんなフォーラムを迎えるのか楽しみだ。