今回は、創設130周年の節目の年(2022年)に世田谷から丸の内に移転した静嘉堂文庫美術館が入る重要文化財・明治生命館をご紹介します。
明治生命館が竣工したのは、約90年前の昭和9年(1934)3月のことです。まず目を惹くのが、古代ギリシア・ローマを源流とする古典主義様式でまとめられている主要な意匠を取り入れた立派な外観です。
なかでもひときわ印象的なのは、トップの写真にもあるように、皇居のお堀端から見上げると、5層分を貫く巨大なコリント式の列柱が立ち並んでいること。西欧の古典主義建築にもひけをとらない、圧倒的な力感をみせています。
建物の設計は、明治末から昭和初期にかけて活躍した建築家で、東京美術学校(現東京藝術大学)教授の岡田信一郎が手掛けました。特筆すべきはこの建物がオフィスビルとして建てられたことです。建物全体の構成や設備の充実度から、昭和初期におけるオフィスビルの最高峰と言えるでしょう。
明治生命館は歴史好きにはよく知られた存在です。その最たる理由は、第二次世界大戦終結後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)に接収されアメリカ極東空軍司令部(FEAF)として使用されたからです。
接収期間中、最高司令官の諮問機関として米・英・中・ソの4カ国代表による対日理事会が設置され、2階会議室は、連合国軍最高司令官D.マッカーサーが演説を行った場所でもあります。
アメリカ軍から返還されたのは、昭和31年(1956)のこと。星条旗に代わり日章旗が掲げられ、明治生命社屋として復活し新しい時代を歩み始めました。
時代の要請に応じ設備の更新などが随時行われましたが、創建当時の意匠を大切に守り続けたことにより、平成9年(1997)に昭和の建造物としては初めて国の重要文化財に指定されました。
現在では歴史あるこの場所はドラマのロケ地としても活躍しており、知らず知らずのうちに目にしている方も多いはずです。
また、現在、1階は店頭営業室(ほけんショップ丸の内)として営業されていますが、会議室などのある2階は常時一般開放されており、無料で見学することが可能です。
2階は1階同様に回廊となっており、壁、柱、柱型に大理石が用いられ、廻りと一体となった吹き抜け空間を構成しています。一方、応接室、執務室、会議室、食堂等では、石ではなく木材が主役を演じ、落ち着いた雰囲気でまとめられています。
2023年7月からは、音声ガイド「歴史・建築の魅力を語る 明治生命館アテンドツアー」がスタートしました。見学者のスマートフォンから無料で利用できる優れものです。ナレーターは大阪芸術大学教授で写真家の織作峰子氏が務めています。
見学ルートに沿って会議室、食堂、執務室、応接室、健康相談室など、歴史のワンシーンや推しの俳優の演技を思い浮かべながら自由に観てまわれる、丸の内の穴場スポットでもあります。写真撮影も可能です。
静嘉堂文庫美術館でアートを楽しんだ後は、クラシックなエレベーターで2階へあがり、丸の内を代表する歴史的な重要文化財「明治生命館」に立ち寄ってみましょう。
重要文化財「明治生命館」
開館時間:9:30~19:00(最終入館18:30)
受付場所:明治生命館2階(西エレベーターをご使用ください)
※ただし12月31日~1月3日およびビル電気設備定期点検日は休館
住所:〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-1-1
アクセス:
【JRご利用の方】
JR東京駅丸の内南口徒歩5分
JR有楽町駅国際フォーラム口徒歩5分
【地下鉄ご利用の方】
地下鉄千代田線二重橋前駅3番出口直結
【丸の内シャトルご利用の方】
丸の内マイプラザ前下車
「ほぼ実寸の曜変天目ぬいぐるみ」が話題沸騰! 丸の内のアート人に聞く! ~静嘉堂文庫美術館 安村館長編~
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