県内中小企業の“DXの底上げ”狙い「Okayama SaaS/DX Ctr.」開設、セミナーや個別相談会を実施
岡山県を「DX先進県」へ、中小企業へのSaaS導入支援施設が岡山市にオープン
「小さな企業まで取りこぼしなくDXを進めていくためには、こうした施設が非常に大切だと考えている。岡山が『DXの先進県』だと言っていただけるような、そうしたものにしていきたい」(岡山エコール 代表取締役社長の西 康宏氏)
2024年1月31日、岡山市北区問屋町に「Okayama SaaS/DX Ctr.」がオープンした。SaaSの導入/活用支援を通じて、DX化が進んでいない岡山県下の中小企業における「DXの底上げ」を図ることを目的とした施設で、IT商材の販売/提案を行う岡山エコールとITディストリビューターのSB C&Sが共同で設立した。
今後、常設の「SaaSショールーム」として運営するほか、SaaS導入を検討する企業を対象とした定期的なセミナー/勉強会、個別相談会を開催していく。同日に開催された開所式には、岡山エコールとSB C&Sのほか県内の経済団体やスポンサーなどから多数の来賓が出席し、同センターを拠点とした県内企業のDX促進への期待を述べた。

Okayama SaaS/DX Ctr.の施設内イメージ(画像は公式サイトより引用)
中小企業へのSaaS普及を図り、岡山県を「DX先進県」へ
Okayama SaaS/DX Ctr.は、岡山県内の中小企業に対するSaaS製品の紹介と導入/活用支援を行うビジネス施設。岡山エコールが運営を行い、協賛スポンサーにはSB C&Sのほか、Dropbox Japan、日本マイクロソフト、LINE WORKS、マネーフォワード、freeeなどSaaSプロバイダー11社、およびCキューブ・コンサルティング(ちゅうぎんグループ)が名を連ねる。
記事冒頭のコメントのとおり、岡山エコール 代表取締役社長の西 康宏氏は、同センターを通じて岡山県内の中小企業にSaaS活用を浸透させ、岡山県を「DX先進県」にしていきたいと抱負を語った。
加えて、「DX先進県」実現には県内の経済団体や学術機関、地銀といったさまざまな組織の力も不可欠だと述べて、同センターの活動に対する協力を仰いだ。開所式には岡山商工会議所、岡山経済同友会、岡山県中小企業団体中央会、岡山大学、中国銀行などの代表が来賓として出席し、同センターを通じて中小企業のDX化が促されることへの期待を語った。
中小企業のDXでは「SaaSこそが鍵」、伴走型で導入課題の解決に取り組む
運営を担当する岡山エコール ICTビジネスソリューション室 室長の西 宏一朗氏は、「コスト的にもパフォーマンス的にも、SaaSこそが地方の中小企業のDXを支える最も重要なキー(鍵)」であり、同センターの活動を通じてSaaSの普及を加速させたいと説明する。
同センターでは主に3つの活動を行う。
●SaaSショールーム:中小企業の経営者やIT担当者が、複数のSaaS製品を実際に触って検討できる常設のショールーム
●セミナー:たとえば電子帳簿保存法やインボイス制度、“2024年問題”といったテーマで、中小企業はどう対応すべきかを解説するセミナーを定期開催する
●個別相談会:経営者/IT担当者が自社のDXの取り組みについて相談できる(予約制)
こうした活動を入り口に、個々の企業が抱える課題の整理や、最適なSaaSソリューションの選定、さらには製品導入後のフォローまでを行うとしている。
同センターが想定する利用者として、西氏は「『そもそもDXが何なのかわからない』、あるいは『DXや業務効率化を進めたいが、具体的にどうすればいいのかわからない』といった方にこそ、この施設に来ていただきたいと思っている」と説明した。
なお、2月6日には同センター(対面方式)で、社労士による労務管理をテーマとしたセミナーを開催する(2月5日、7日にはオンラインセミナーを開催)。6日のセミナーでは個別相談会も実施する。
地方の中小企業にとって、DXの相談相手は「ITパートナーではない」現実
協賛スポンサーの1社であるSB C&S 常務執行役員 ICT事業本部 営業統括担当の藤原 勝氏は、ITディストリビューターという立場から同センターに期待することを語った。
SB C&Sでは数年前から、地方の中小企業(SMB)をターゲットとして新たな組織を立ち上げ、最新のIT技術をどう届けるかという取り組みを続けてきたという。その取り組みの中では、販売店やSIerといったITパートナー経由だけでは“うまく届かない”現実も見えてきたと説明する。
「全国アンケートで、中小企業のトップ(経営者)の方に『DXやITというキーワードで、誰に相談しますか』と質問したところ、最も多かった答えが『商工会議所』、次が『金融機関』だった。『ITパートナー』に相談するという回答は5位くらいで、全体の数パーセントしかいなかった」(藤原氏)
そこで昨年、東京商工会議所と共にDXセミナーを実施したところ、多くの中小企業が集まり「こういうことが聞きたい、ああいうことが聞きたいと、本当に行列ができた」と語る。
また、中小企業においてSaaS導入が進むきっかけについても実態調査したところ、ITによる業務改革などよりも、「(SaaSや新しいITを)導入しなければ得をしない(損をする)」国の税制ルール改正がより強い契機になっていたという。
こうした現実をふまえつつ、現在は全国のパートナーと共に「中小企業における成功事例を作ること」が大きなテーマだと藤原氏は語る。同センターでの取り組みを通じて岡山で生まれた成功事例を全国に発信し、また全国(さらには世界)の成功事例をいち早く岡山にも紹介することで、中小企業におけるDX推進をサポートしていきたいと述べた。
スポンサーの1社として出席したDropbox Japan 代表取締役社長の梅田成二氏も、藤原氏と同様に「サービスプロバイダーの側から、全国にたくさんある企業一社ごとの課題に精通することは非常に難しい」と語る。そうした観点から、中小企業とITベンダーだけではない、多様なステークホルダーの“ハブ”となる同センターの取り組みは良いものだと評価した。
梅田氏は「Dropbox DocSend」や「Dropbox AI」など同社の最新ツールがもたらす生産性の向上について紹介したうえで、「こうしたSaaSの進化も、やはりお客様企業の課題にマッチングさせなければ大きなインパクトが出ない。そのため、Okayama SaaS/DX Ctr.のような施設はものすごく存在価値が高い。わたし自身もDropboxも協力を惜しまず、一緒にDXの推進を目指したい」と語った。
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