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自動巡回で立ち入り禁止エリアの不審者や不審物の置き去りなどを発見

犬型AIロボットが空港警備を代替、日本IBMが実証実験を公開

2024年01月22日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 日本IBMが、愛知県常滑市の中部国際空港(セントレア)において、AI搭載ロボットを活用した空港警備業務の実証実験を公開した。ボストン・ダイナミクス製の犬型ロボット「Spot」を活用して不審者を発見し、警告を発するほか、ロボットが収集した画像データを使って警備計画の高度化を図り、警備業務の省力化や労働環境の改善、警備人材不足の解消を目指す。

立ち入り禁止エリアでの実証実験の様子。四足歩行する犬型ロボット「Spot」が不審者を発見している

空港内を自動巡回して不審者や不審物を発見、警備員の労働負荷を軽減

 今回の実証は、内閣府の「先端的サービスの開発・構築や先端的サービス実装のためのデータ連携等に関する調査事業」に採択された「空港等の警備業務におけるAI搭載ロボットの導入に関する調査・実証」に基づくもの。日本IBMが事業代表者として受託し、愛知県などと調査を実施している。2024年1月18日と19日、2月15日と16日の2回に渡って、人による警備業務の一部にAI搭載ロボットを活用する効果を検証する予定であり、その取り組みの一部が公開された。

 空港の警備業務は、天候や気温に関係なく24時間体制での対応が不可欠だ。また定期的な巡回では、危険な事象や不審物を確実に発見することが求められ、見回るポイントや瞬時の判断には注意力と経験値も必要とされる。こうした業務の一部をロボットに代替させることで、負荷が高い労働環境の改善や、警備人材の不足という課題の解消につながることが期待できる。

 実証では、現在の空港警備の業務内容やその負担を整理したうえで、ロボットで代替できる業務を検討。中部国際空港の北側場周フェンス付近にある立ち入り禁止エリアを使って、ロボットの導入による効果を検証する。さらに、ロボットが収集したデータの活用によって、警備業務を高度化するための各種検討も行う。

 今回のロボットは、自動操作によって空港構内の定期巡回を行いながら、搭載カメラから映像を取得して、AIにより異常を判断する。立ち入り禁止エリアで不審者を発見した場合、ロボット自身で対応できると判断すれば、警告を発して危険な場所から退避させるといったことを行う。

 また、不審者を発見したロボットは警備室に通知するため、人間の警備員が現場の映像から異常の内容を確認し、手動操作に切り替えて対応したり、ロボットが搭載するスピーカーとマイクを使って不審者と対話したりといったこともできる。

 実際の空港では、空港業務を妨害しようとする者だけでなく、航空機マニアが撮影などの目的で禁止エリアに侵入する例もあり、そうした課題にも対応できると期待しているという。ほかにもこのロボットは、空港設備の破損や劣化の発見、護岸に接近する船舶の有無、鳥類の有無といった確認も行う。

実証では、ロボットが不審者を発見して「ここは立ち入り制限区域です。関係者以外はすみやかに立ち退いてください」と警告を発した

 さらに旅客ターミナルビル内でも、荷物の置き去りや不審物の検知などを目的とした実証を行う(一般利用者も見学が可能)。ビル内の駐車場連絡通路や降車レーンを使用し、公道や横断歩道を自動走行できるかどうかの検証、加えてAI搭載ロボットに対する社会的受容性も検証するという。今後、空港周辺の公道などにおいてAI搭載ロボットを使用する際の道路交通法上の取り扱いについても検討し、AI搭載ロボットの活用場面の拡大を目指すという。

有効性の実証を通じて「愛知県内全体の高度化にもつなげたい」

 今回の実証は、愛知県が推進する「あいちデジタルアイランドプロジェクト」の対象エリアにある中部国際空港で行われている。同プロジェクトでは、中部国際空港島および周辺地域を「先端的なデジタル技術を活用したオープンイノベーションフィールド」と位置づけており、このエリアで近未来の事業やサービスを先行して実用化することを目指している。

愛知県 経済産業局 産業部 産業振興課 次世代産業室 室長の江尻和聰氏(右)、日本IBM パートナーの西川啓氏(左)

 愛知県 経済産業局の江尻和聰氏は、「このエリアには空港、駅、ホテル、大規模ショッピングセンターなどがあり、都市の縮図ともいえる場所となっている。このエリアを活用して、世界中の先進的技術を持った企業に実証実験を行ってもらいたいと考えている」と述べた。空港だけでなくさまざまな施設の警備業務をAI搭載ロボットに代替することを通じて「愛知県内全体の高度化にもつなげたい」という。

 また、日本IBM パートナーの西川啓氏は「ロボットの活用とともに、撮影した映像データを蓄積し、検証できる機会。収集した映像を、有用なデータとして活用することに取り組みたい」と語った。

 実証の実施体制は、日本IBMが幹事会社として事業全体の管理や推進を行い、日本IBMシステムズ・エンジニアリングが調査や実証の計画、実施、評価、取りまとめを行う。また、ボストン・ダイナミクスの国内販売代理店である東北エンタープライズがSpotの提供と技術支援を、中部国際空港が実証実施エリアの提供と実証内容のアドバイス、実証結果の評価を担当する。そのほか、航空保安協会と全日警が警備内容のアドバイスと評価を、愛知県と常滑市が規制改革に関する調査支援や道路使用許可の調整などを行っている。

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