それではなぜHARMANがRoonを買収したかということについては現時点ではわからない。しかし単にRoonを独立して運用し、Roonビジネスだけから利益を得ようとして買収したのではないだろうとも考えられる。
ヒントになるいくつかのポイントとしては、米HARMANがサムスン電子の100%子会社であるということ。ハーマンの主要な製品分野にカーオーディオがあるということがあると考えられる。
HARMANのプレスリリースでは、ライフスタイル部門の責任者であるDave Rogers氏が「Roonのチームは音楽好きが自宅や外出先で音楽を探したり、発見したり、聴いたりするさいに、優れた接続性と音質を提供するという点で我々と同じである」と書いていることにも注目したい。最新のRoonの成果であるRoon ARCがそのキーになりそうだ。Roon ARCはインターネットを通じて外出先や車の中でも家にある音楽ライブラリーを再生できる仕組みだ。これはカーオーディオやスマホにとっては一つの革新となりうるだろう。
両社はいまのところ円満に統合が進められているようだが、将来のことまで予測することは難しい。
ハーマンは過去にJBLやAKGなどの有名ブランドを統合している。AKGについては生産拠点統合が推し進められ、工場閉鎖に反対したメンバーが、現在のAustrian Audioを設立している。そしてAustrian Audioは最近ではコンシューマ向けのハイエンドヘッドホンを開発して、事実上のAKGブランドを引き継いでいることも頭をよぎる。
もちろん悲観的な予測も可能だが、Roonのバージョン更新のペースが最近落ちていることを考えると、新しい資本が入ってくるのは歓迎すべきことかもしれない。Roonの公式な声明では「我々は多くをなし遂げてきたが、もっと多くのことをしたい。ハーマンは我々がやってきたことを推し進めることができるパートナーだ」というようにこの統合のことを書いている。
RoonのCEOであるEnno Vandermeer氏はハーマンのプレスリリースに寄せて、「HARMANと力を合わせることで、Roonは世界的なテクノロジー・リーダーの素晴らしい能力を得ることができ、同時に事業の成長と将来に投資するための独立性を維持することができます。」と展望を語っている。
この買収が両者にとってWin-Winとなり、ひいてはオーディオユーザーにとってもメリットになることを期待したい。
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