プライバシー・セキュリティに配慮、ユーザー体験に合わせてカスタマイズ可能なAlexa
ビジネス向け「Alexa」国内提供開始 ― ホテルやマンション、高齢者施設、地方自治体向けに
2023年12月06日 08時00分更新
アマゾンジャパンは、2023年12月4日、パーソナルAIアシスタント「Alexa」を活用した法人向けソリューション「Alexa Smart Properties(アレクサ・スマート・プロパティー)」の国内提供を開始した。
ホテルやマンション、高齢者施設、地方自治体に向けてAlexaのテクノロジーを提供するソリューションで、Amazonと契約するソリューションプロバイダーを通じて施設などに一括導入し、集中管理、カスタマイズできるのが特徴だという。Alexaの個人向けサービスで蓄積したノウハウを活用した新たなビジネス展開となる。
米Amazon.comのAlexa Smart Properties担当ディレクターであるBram Duchovnay(ブラム・ドゥカブナイ)氏は、「すでに50億台以上のデバイスが販売されているAlexaを、あらゆるエンタープライズに活用してもらうためのソリューションになる」と位置づけ、「従業員の効率性があがり、収益があがり、ブランドの差別化が図れる。サービスを利用する顧客にとっても、よりたくさんの情報が得られ、心地よく、楽しめる環境を手に入れることができる」と述べた。
ビジネス向けにプライバシーやセキュリティにも配慮、ニーズにあわせてカスタマイズ可能なAlexa
Alexa Smart Propertiesでは、Amazonが提供する専用APIや、あらかじめ設定したEchoデバイスを活用して、ビジネスのニーズにあわせたAlexa活用のソリューションやサービスを実装できる。Alexaアプリは利用せず、ソリューションプロバイダー経由で提供され、企業や施設、地方自治体に合わせた個別のカスタマイズが可能だ。匿名化された法人アカウントを使用し、デバイスの設定は、管理者が集中管理する。
また、デバイス上部にあるマイクオフボタンを押すことで、音声の聞き取り用のマイクをいつでもオフにすることができ、利用者のプライバシーにも配慮。Amazonに個人情報を渡すことなく、Alexaの音声サービスを利用できる。また、発話時にスキル名がなくても、Alexaスキルを起動でき、さらに音声録音もされない。
アマゾンジャパンのAlexaインターナショナル事業開発本部 本部長である澤田大輔氏は、「ディスプレイを搭載したEcho Showでは、待機画面を企業のブランドにあわせてカスタマイズできたり、法人アカウントで運用できたりする。個人アカウントを利用することなく、Alexaを楽しむことができる」と説明する。
Alexa Smart Propertiesは、米国、カナダ、英国、フランス、ドイツ、イタリアおよびスペインの7カ国で、すでにサービスを展開。欧米の高齢者施設への導入実績では、入居者コミュニティへのエンゲージメントが50%増加、入居率も14%増加し、さらには従業員の定着率が32%向上するといった成果が生まれているという。「Alexaの導入によって、日常的な業務の効率化が可能になり、介護者はより付加価値が高い業務に集中できる」とDuchovnay氏。
また、ディズニーリゾートでは、Alexa Customer Assistantとして活用。別の宿泊施設では、室内のスマートコントロールの体験、ルームサービスのリクエストなどにも活用され、顧客満足度が80%上昇し、飲食に関する売上げが倍増したという。
澤田氏は「日本は、超高齢者社会であり、労働者人口の減少という課題を持つ一方で、インバウンド需要やスマートホームの普及といった動きがある。こうした課題やトレンドにも対応できるサービスである」とする。
高齢者施設やホテルやマンションでの先行事例
日本での先行導入事例についても披露された。
高齢者施設の事例では、ニチイケアパレスが2023年7月に開設したニチイホーム南大井において先行導入、77室にAlexaを設置した。ソリューションプロバイダーとしてNTTデータがカスタマイズなどを担当し、同社が開発した高齢者コミュニケーションサービス「ボイスタ」も活用する。
Alexaを活用したビデオ通話や、Echo Showのディスプレイに思い出の写真などを表示することにより、家族とのコミュニケシーョンを促す空間を実現。食事や入浴などのスケジュールも、独自キャラクターのボイちゃんが通知し、対話の活発化や、入居者の活動量の増加につなげている。また、介護者の負担軽減、業務効率化の成果も得られれているという。
ニチイケアパレスの代表取締役社長である秋山幸男氏は、「Alexa Customer Assistantにより、高齢者の尊厳を大切にしながらも、豊かな生活を実現できる。高齢者がAlexaを使いこなせるのかという不安があったが、すでに市販のAlexaを購入して、楽しく活用するという例があった。高齢者の自立支援と、豊かな生活を実現するとともに、介護者の業務効率化などにより、人材確保と定着化の向上にもつながる」と述べた。
ホテルの事例では、TradFitの支援を受け、東急ホテルズ&リゾーツが、2024年1月に札幌・すすきのにオープンするライフスタイル型ホテル「SAPPORO STREAM HOTEL」に採用。Alexaを通じて、ホテル内の施設について確認できたり、好きな音楽を楽しんだりすることが可能になるという。海外からの宿泊客が英語で情報を得ることもできる。
東急ホテルズ&リゾーツの常務執行役員 東日本エリア統括である宮島芳明氏は、「プレミアムフロアの53室に、56台のEcho Show 8を導入し、他のフロアにはない価値を提供し、滞在価値の向上させる。周辺情報や観光情報を気軽に聞いてもらうことで、ビジネス目的のゲストに旅行意欲を促し、地域活性化につなげたい。また、Alexaがゲストの一般的な質問に回答してくれるため、スタッフは質の高いサービスに集中できる」とした。
マンションの事例では、アクセルラボの支援を受け、大東建託のグループ会社であるインヴァランスのCREVISTA品川西大井Ⅲに、mui Labの支援を受け、大阪ガスの実験集合住宅であるNEXT21に導入された。
CREVISTA品川西大井Ⅲは、9階建て39室の新築マンション。Echo Show 15を導入することで、スマートホームが標準化され、内覧時点でもスマートホームの体験が可能になった。入居後には連絡事項や災害情報をもれなく伝えることもできる。
インヴァランスの代表取締役である高橋由崇氏は、「2018年から、玄関の開錠や家電操作をスマホアプリで行うなど、スマートホーム化を進めてきた。入居者の満足度を高めることが、マンションを購入した資産家の安心、安全につながる」と述べた。
大阪ガスの社員家族が居住する実験集合住宅「NEXT21」の導入では、各居室に設置されたEcho Show 8を通じて、Alexaの様々な機能が利用できるだけではなく、電力の使用状況などの情報も得ることができる。真夏や真冬などに電力需給がひっ迫した際にはAlexaから居住者に通知を送り、節電を促す。