「聖地」で満たす大人の探求心

「盆栽って結局何が楽しいの?」って人、その答え、すべて「さいたま市大宮盆栽美術館」にあります

文●村野晃一/編集 ASCII

提供: さいたま市

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盆栽ってピンキリだけど、何がスゴイとどうイイの?

 盆栽に関する、私の一番の謎はその価値に関するものだ。年末などに芸能人がお高い盆栽とぼちぼちな盆栽を見た目で判別するというバラエティ番組の企画があったりするが、あれはカメラ越しだから私には分からないのだろうか? 1億円の盆栽とホームセンターの園芸コーナーで売られている数千円の盆栽は何が違うのか? その値段はどのようにして決まっているのか?

 というわけで、早速、田口さんに最初の疑問をぶつけてみる。

──早速ですが、一番最初に一番下世話な質問なんですけど、盆栽ってものすごくお高いものから、かなりリーズナブルなものまでありますが、その価値というのはどうやって決まってるんですか?

田口「そうですね。盆栽の価値はいろいろ複合的な要素が絡み合って決まるんですが、分かりやすいところから言うと、まず”樹齢”が挙げられます。樹齢1000年など、長く生きている樹ほど希少性が高いですからね」

──まず歴史なんですね。

田口「もちろん、古い樹ならなんでもいいというわけではないんです。貴重な品種であるということもひとつですし、盆栽として仕立てられてきた歴史というのも加味されます」

──ああ、なるほど。樹として生きてきた樹齢に加えて、盆栽として育てられた歴史はまた別の基準ということなんですね。山の中で1000年、人の手で育てられて100年みたいな。

田口「そうなんです。園芸店で売られているものは、畑で苗木から人が育てたものなので、比較的リーズナブルに手に入れることができますが、”山採り”と言って、何年もの間山で育ってきた樹を人が取り上げ、盆栽として活着させた”山採り盆栽”は、やはり希少性が高く、貴重品として扱われます」

──養殖と天然物の魚みたいですね。

田口「そして、盆栽の歴史としてのもうひとつの重要な要素が、”来歴”といって、誰が手入れをしてきた鉢なのか、ということなんです」

──誰がその盆栽を持っていたのかが大事、ということですか?

田口「そうです。これまできちんと管理されて育てられてきたものなのか、著名な方に愛された盆栽なのか、といったこともその価値を決める要素になります。また、コンテストなどでの受賞歴というのもあります」

──絵画などだと、所有者がキャンバスに裏書きしたりしますが、似たような感じですか?

田口「割りと近いですが、盆栽には誰それが所有したといった鑑定書や証明書みたいなものはないんです。基本的に口伝で、その歴史が追えるということが重要なんです」

──ということは、途中で、例えばまったく盆栽の手入れの仕方が分からない私みたいな人間が所有することになってしまったら、それで価値が落ちちゃうってことなんですか?

田口「そうなることもありえますね。それは初心者の方が所有したから、という直接的な理由ではなく、きちんと手入れができず、形やバランスが崩れたり、生命力が弱くなってしまったりすれば、今高い価値を持っている鉢でもその価値は落ちてしまいます。歴史を重ねるごとに価値が上がり、育てる人や育った形によっても価値が変わる、それが、盆栽が”生きた芸術”と言われる所以なんです」

──なるほど。面白いですね。私はてっきり、盆栽のオークションみたいなものがあって、その鉢を欲しいと言った人がいくらで落札したというような、絵画のような方式で値段が決まっているのかと思ってました。

田口「もちろん、歴史だけですべてが決まるわけではなくて、盆栽としての素晴らしさがあることが重要で、多くの人を惹きつける魅力を持っていることが大切になります」

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