東京大学と名古屋大学の共同研究チームは、コンクリートなどのセメントを用いた材料について、空気中の二酸化炭素(CO2)と反応して無機炭酸塩の形で固定化したものであることと、その際に固定化した二酸化炭素量を、炭素の放射性同位体である炭素14(14C)を用いて明らかにする手法を開発した。
東京大学と名古屋大学の共同研究チームは、コンクリートなどのセメントを用いた材料について、空気中の二酸化炭素(CO2)と反応して無機炭酸塩の形で固定化したものであることと、その際に固定化した二酸化炭素量を、炭素の放射性同位体である炭素14(14C)を用いて明らかにする手法を開発した。 セメント業界が排出する二酸化炭素は地球温暖化に大きな影響を与えているとされているおり、コンクリート中に炭酸カルシウムを析出させる二酸化炭素回収貯留が、相殺手段として評価・検討されつつある。だが、セメントを使った材料が空気中の二酸化炭素を抽出して固定化したことやその量を証明する手法はこれまでなかった。 研究チームは、コンクリートは空気中の二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムができることに着目。炭酸カルシウムと反応する主要部分であるセメントペースト(水とセメントが反応して硬化したもの)を、十分に硬化反応が進んだ後に粉砕して空気に暴露させ、一定期間後に炭酸化反応が進んだことを粉末X線回折による鉱物組成分析で確認した。 試料をリン酸で溶解させて無機炭酸塩のみを分解してガスを捕集し、そのガスの炭素14濃度を測定。さらに、炭酸カルシウムが析出する場合の化学反応において、炭素13と炭素12の割合を用いて炭素14と炭素12の同位体分別補正を実施することで、炭素14の測定結果から、空気中から固定した二酸化炭素量を求められることがわかった。 今回の成果は、コンクリート業界の直接空気回収(DAC)による二酸化炭素固定化の真贋評価などに利用することで、炭素市場における取り引きの健全化に貢献することが期待される。研究論文は、日本コンクリート工学会の欧文学術誌(Journal of Advanced Concrete Technology)に掲載された。(中條)