印南敦史の「ベストセラーを読む」 第14回
『今日も小原台で叫んでいます 残されたジャングル、防衛大学校』(ぱやぱやくん 著、KADOKAWA)
防衛大学校という“ジャングル”の日常は、吹き出しそうになるほどおもしろい
2023年11月30日 07時00分更新
そもそも、なにかと謎が多く実態をつかみにくい場所ではあるのだ。そのせいか、防衛大学校(以下:防大)についてはトピックになりやすい情報ばかりが過度にクローズアップされがちな気がする。
事実、学生時代の私の耳にも、「学生なのに給料がもらえる」とか「そもそも学費が無料だ」など、“魅力的に思えなくもない”情報ばかりが飛び込んできたものだ。だが当然ながら、オイシイ話ばかりではないだろう。もしもいいことづくめだったとしたら、とんでもない数の入学志望者が殺到することになるだろうし。
『今日も小原台で叫んでいます 残されたジャングル、防衛大学校』(ぱやぱやくん 著、KADOKAWA)の著者も、高校卒業後に目を輝かせながら防大に進学したものの、着校初日に「家に帰りたい」と本心から思ったのだそうだ。
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今日も小原台で叫んでいます 残されたジャングル、防衛大学校 |
・常に集団生活のためプライベート空間は皆無。平日外出やテレビの保有は禁止などの制約が多々あり、「修行僧」のような生活を求められる
・「廊下は戦場」「3歩以上は駆け足」「同期と対番学生以外は全て敵」という不穏なパワーワードが合言葉
・指導が飛び交い、「命の煌めき」を求められる清掃(「はじめに」より)
このように日常はハードそのものであり、一般社会における常識はあてはまらない様子。そのため、「大学に進む」というよりも「ジャングルへ行く」といった気持ちで進学したほうがギャップは少ないだろうという。
しかしその一方、防大には防大ならではのユーモアやおもしろさがあるようで、著者のなかにも稀有な経験が強烈に焼き付いているようだ。つまり本書にはそんな、経験から得た数々のトピックスが凝縮されているのである。
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