脳は記憶しないと小さくなる
その一方で、こんなことも語る。
「1997年頃の米国では、インターネットによって、人間の脳がどこまで退化するのかといった内容の本が人気を博した。人間の脳は、記憶の部分を使わないと、その部分を司る脳がどんどん小さくなるという。インターネットを使ったり、スマホを持ったりすると、記憶しなくていいことが増え、脳が退化する。これは大変怖いことである。私の記憶もどんどん消えている。これは老化でぼけているのか、インターネットのせいでぼけているのか」と笑う。
自分を敢えて倒す進化もある
今後のインターネットの世界については、「ネットワークはもっと速くなり、それによって事業の形態が変化する。AIも処理能力が高まるだけでなく、高速ネットワークとの組み合わせることで進化する。来年や再来年には、巨大なネットワークが構築され、いまは、その曲がり角にある」と前置きしながらも、「IIJはこれからも成長することは間違いない。また、こんなことができるという世界も提示できる。問題はそこでどんなカルチャーを構築するのかという点である」と発言。さらに、「今後の日本や、今後のネットワークを考えると、明るい世界は出てこない。いま、量子コンピュータでは、IBMが一番進んでいる。だが、ちゃんとした量子コンピュータができると最も困る企業はIBMである。新たな技術への革新は、自分すら飲み込まれてしまう恐れがある。自分が作った技術革新によって、自分の会社の存在意義(レゾンデートル)が無くなってしまうこともある。いまはこういう世界がやってきている」とする。
30年以上に渡り、世界に変革をもたらしてきた「インターネット」の世界を、先頭で牽引しつづけてきたIIJの鈴木会長は、いまの新たなテクノロジーがもたらす変化が、これまで以上に、大きな波となり、私たちを飲み込む可能性を強調した。
訂正とお詫び:タイプミスを修正しました。(2023年12月1日)
この連載の記事
-
第606回
ビジネス
テプラは販売減、でもチャンスはピンチの中にこそある、キングジム新社長 -
第605回
ビジネス
10周年を迎えたVAIO、この数年に直面した「負のスパイラル」とは? -
第604回
ビジネス
秋葉原の専門店からBTO業界の雄に、サードウェーブこの先の伸びしろは? -
第603回
ビジネス
日本マイクロソフトが掲げた3大目標、そして隠されたもう一つの目標とは? -
第602回
ビジネス
ボッシュに全株式売却後の日立「白くまくん」 -
第601回
ビジネス
シャープらしい経営とは何か、そしてそれは成果につながるものなのか -
第600回
ビジネス
個人主義/利益偏重の時代だから問う「正直者の人生」、日立創業者・小平浪平氏のことば -
第599回
ビジネス
リコーと東芝テックによる合弁会社“エトリア”始動、複合機市場の将来は? -
第598回
ビジネス
GPT-4超え性能を実現した国内スタートアップELYZA、投資額の多寡ではなくチャレンジする姿勢こそ大事 -
第597回
ビジネス
危機感のなさを嘆くパナソニック楠見グループCEO、典型的な大企業病なのか? -
第596回
ビジネス
孫正義が“超AI”に言及、NVIDIAやOpen AIは逃した魚、しかし「準備運動は整った」 - この連載の一覧へ