理化学研究所と東京大学の共同研究チームは、室温において、熱流による「アンチスキルミオン」と「スキルミオン」の相互変換の制御に初めて成功した。
理化学研究所と東京大学の共同研究チームは、室温において、熱流による「アンチスキルミオン」と「スキルミオン」の相互変換の制御に初めて成功した。 「スキルミオン」は、固体中の電子スピンによって形成される渦状の磁気構造体であり、トポロジカル数「-1」で特徴付けられ、安定な粒子として振る舞う。数十~数百ナノメートル(nm、1nmは10-9メートル)と微小であることに加え、低電流で駆動できることから、省電力デバイスなどへの応用が期待されている。「アンチスキルミオン」は、トポロジカル数「+1」を持つ反渦状の磁気構造体であり、スキルミオンの反粒子と考えられている。 研究チームは今回、磁性体(Fe0.63Ni0.3Pd0.07)3P(Fe:鉄、Ni:ニッケル、Pd:パラジウム、P:リン、以下「FNPP」)に室温・ゼロ磁場で約200nmのスキルミオンを生成した。そして、温度勾配による熱流を与えるとスキルミオンがアンチスキルミオンに変化し、次に、外部磁場をかけるとともに温度勾配を変化させるとスキルミオンへと変化することを確認した。 アンチスキルミオンとスキルミオンのトポロジカル数(+1, -1)は電子デバイスにおける(0, 1)に対応させることができる。今回の成果により、さまざまなプロセスで生成される「熱流」を利用したトポロジカル数の制御が可能となり、トポロジカル磁気デバイスの開発に寄与することが期待される。 研究論文は、科学雑誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に2023年11月4日付けで掲載された。