国立天文台を中心とする国際共同研究チームは、「アルマ望遠鏡(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計、Atacama Large Millimeter/submillimeter Array:ALMA)」を用いて、近傍宇宙にある「コンパス座銀河」を約1光年という非常に高い解像度で観測。超巨大ブラックホール周辺わずか数光年の空間スケールでのガス流とその構造を、プラズマ・原子・分子の全ての相において、世界で初めて定量的に測定した。
国立天文台を中心とする国際共同研究チームは、「アルマ望遠鏡(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計、Atacama Large Millimeter/submillimeter Array:ALMA)」を用いて、近傍宇宙にある「コンパス座銀河」を約1光年という非常に高い解像度で観測。超巨大ブラックホール周辺わずか数光年の空間スケールでのガス流とその構造を、プラズマ・原子・分子の全ての相において、世界で初めて定量的に測定した。 多くの大質量銀河の中心には、その質量が太陽の100万倍以上に達する「超巨大ブラックホール」が存在する。研究チームは今回、コンパス座銀河の明るく輝く活動銀河核の光を手前の分子ガスが吸収し、影になっている現場を、アルマ望遠鏡の高解像度観測で特定。銀河中心から数光年にわたって存在する高密度分子ガス円盤において、活動銀河核の超巨大ブラックホールめがけて落ちていく降着流をとらえることに初めて成功した。 同チームは、この銀河中心部でのガス降着を引き起こす物理機構も解明。観測されたガス円盤自身の重力が、ガス円盤の運動から計算された圧力では支えきれないほど大きいことから、ガスが中心のブラックホールめがけて一気に落ちていく「重力不安定」と呼ばれる物理現象が起こっていることを明らかにした。さらに、降着流の大半はブラックホールの成長には使われず、原子ガスか分子ガスとして一度ブラックホール付近から噴き出た後、ガス円盤に舞い戻って再びブラックホールへの降着流と化す、噴水のようなガス循環が起こっていることも分かった。 研究論文は、サイエンス(Science)誌に2023年11月2日付けで掲載された。(中條)