厳しい暑さが過ぎ、一気に過ごしやすくなりました。移転して2度目の“芸術の秋”を迎えた静嘉堂@丸の内では、12月17日(日)まで「二つの頂―宋磁と清朝官窯」展を開催しています。
中国陶磁の歴史上、二つの頂点といえる宋代の陶磁器・清朝の官窯磁器。静嘉堂の所蔵品から精選された宋磁と清朝官窯磁器の名品をご覧いただけます。多彩な技法や美しい色が見どころの至高の宋磁、細密で華やかな絵付けや造形を誇る究極の清朝、あなたはどちら派?
そして、おなじみのあの国宝ももちろん登場。“国宝 曜変天目「稲葉天目」のすべて”と題し、曜変天目と天目台(尼崎台)、箱や仕覆などの次第を一挙公開しています。
また、11月12日(日)には関連イベント、キュレーターズ・ダイアローグ「中国陶磁の魅力を語る」を開催いたします。出光美術館 学芸課長・徳留大輔氏をゲストにお迎えし、本展担当学芸員の山田正樹との熱いトークをお楽しみいただく予定です。
詳しくは静嘉堂文庫美術館のホームページ(https://www.seikado.or.jp/)もご覧ください。みなさまのご参加をお待ちしています。
さて、今月の館長メッセージは、乾燥に悩むこれからの季節におすすめしたいミュージアム・グッズのご紹介です。
今回紹介するのはミュージアム・グッズとしては異色のもので、「なぜ静嘉堂で?」と問われるものだ。商品名は「静嘉堂至福の泡風呂」で、入浴剤である。これがミュージアム・グッズとなった経緯は次のようである。
今年(令和五年)の正月一日、午後11時からNHKテレビ「キュレーター・バトル」という番組が放送された。これはNHKがSNS等で全国の学芸員たちにあるお題を与え、それについてTwitter(現在のX)で応募してきた各館の作品から、「いいね」の点数が多いものなどをスタジオで取り上げて番組にする、というものだ。この回のお題は「これどうなっているの。」。山田五郎さんと私がゲストを迎える。この時のゲストがIKKOさんで、収録時にIKKOさんからお手紙付きのお土産を頂いた。
それがエミュールという会社が制作している入浴剤で、私は自宅で使ってみて、その泡立ちのすごさと、すべらかな肌への感触に驚いた。後日、わかったことだが、この入浴剤は無香料で、保湿性を肌に与えるので、カサカサになってカユクなることがないすぐれものであった。その泡立ちの量の異常さと、きめ細かさに感動した私は、これをネットで買って、女性に配りまくった。そのうちの静嘉堂の職員から、「館長、これミュージアム・グッズにしませんか?」と提案されて商品化に進んだ。
入浴剤自体は即座に変えることがむずかしく、当面パッケージデザインを独自のものにする方向で検討していった。担当者が飛び込みで会社に電話し、社長がすっ飛んできたのが三月。それから様々な苦心を重ねて、いよいよ十月に商品完成となり、販売することとなった。三包入りで千百円。静嘉堂文庫美術館が誇る曜変天目の気泡と入浴剤の泡が呼応するということでパッケージデザインが決まった。
ぜひお試しあれ。その泡立ちのすごさに、まずは驚いてほしい。
安村敏信(静嘉堂美術館館長)
静嘉堂@丸の内 ミュージアムショップ
住所:東京都千代田区丸の内2-1-1 明治生命館1F
営業時間:10:00~17:00、金曜日10:00~18:00
定休日:月曜日 ほか展示替え期間など
美術館HP:https://www.seikado.or.jp/