もう少し「F1とデジタルの親和性」という考えについて、考察を深めてみたい。チームにおけるコグニザントの役割について、マイク・クラック氏は、総括的に「新しく設立したテクノロジーキャンパスにおける、デジタルアーキテクチャとインフラストラクチャの導入から運用を支援し」「自動化されたインテリジェンス、機械学習、クラウド戦略を絡めながら、複雑な要件に対応すべくデータ分析ツールを構築し、オペレーションに適用」していると話す。
テクノロジーキャンパスとは、イングランドのシルバーストンに設けられた、チームの拠点を指している。この拠点は、マシンの製作を含む、チームに関するあらゆる作業が行われる、チームにとっての空間的な心臓部だ。
マイク・クラック氏のコメントから、そこには、コグニザントが提供する、AIとクラウドに関するデジタル技術が、拠点の重要な役割を占める形で組み込まれていることがわかる。
結局のところ、コグニザントの技術は、チームの中でどのように、また、どれくらい使われているのか? これを「技術」の側面から語ってもらった。
「モータースポーツは、迅速で衝動的な意思決定を行うことだと思われがちです。最前線の瞬間瞬間の責任を担うドライバーにとっては、それも重要です。
ですが、私たちエンジニアは、違う観点も持っています。『データ、プロセス、分析、履歴情報、シミュレーション、モデリング』に重点を置く考え方です。その領域や考え方において、コグニザントとは完全に一致しています。コグニザントは、データのモデリングと分析に関する豊富な経験を持っていて、それもまた、実務の面にとって、非常に強力なサポートなのです」
和やかだが、張り詰めたような緊張感も漂う、バックヤード。コグニザントのピットは、シルバーストンの拠点にある整備室を、あらゆる機材や設備の位置関係を変えないままに、世界中どこへでも持っていけるように設計されているという。そこに漂う、エンジニアたちが醸し出す空気感は真剣そのもので、F1の世界で古くから続けられてきたであろう「現場での作業」の雰囲気である。
しかし、マイク・クラック氏、松崎淳氏両名の話を加味して眺めてみると、そのバックグラウンドには、かつての時代にはなかった「デジタル」が息づいていることも感じられた。それは、機械式の膨大な接点によって駆動する初期のコンピューターが、OSとプロセッサーを得て、より洗練された、効率的な装置に変化した様子にも似ている。F1という巨大な装置は、デジタルで進化し続けている。