本連載は、マイクロソフトの「Microsoft 365」に含まれるSaaS型デスクトップ&Webアプリケーション「Microsoft 365 Apps(Office 365)」について、仕事の生産性を高める便利機能や新機能、チームコラボレーションを促進する使い方などのTipsを紹介する。今回はBing Chat Enterpriseに注目した。
企業向けBing ChatであるBing Chat Enterpriseの登場
Microsoftは2023年5月に、Microsoft BingやMicrosoft EdgeなどにBing Chatの展開を開始したものの、あくまでもサービス内容はコンシューマー向け。社内利用を躊躇する方に試してほしいのが、2023年7月18日(現地時間)開催の年次イベント「Microsoft Inspire 2023」にてプレビュー版が発表された「Bing Chat Enterprise」である。
Bing Chat EnterpriseではAI(人工知能)との会話データはテナントに閉じるため、一般的なChatGPTやBing Chatと異なり、情報漏えいのリスクは最小限となる。コンシューマー向けBing Chatの使用は機能確認にとどめていた筆者だが、Bing Chat Enterpriseは活用中だ。文筆を生業としている以上、AIが生成した文章は使用しないものの、異なる観点を気付かせてもらうために役立てている。ちなみに本稿をチェックしてもらうと、情報ソースの欠落を指摘された(修正済みである)。
さて、コンシューマー向けBing ChatとBing Chat EnterpriseのLLM(大規模言語モデル)はおそらく同一だと推測する。そこで気になるのが同一質問に対する回答だ。下記の図はコンシューマー向けBing Chat、Bing Chat Enterprise、ついでにChatGPT(GPT-3.5)に「ASCII.jpの歴史を教えてください」と問いかけてみた結果である。ちなみに会話スタイルは「厳密」を選択した。
ソースとしてWikipedia.orgを追加しているためか、類似した結果になっている。ChatGPTは保有データ期間の関係から簡素な回答だ。質問系の問いはBingの検索結果を丸めて文書化しているにすぎないので、今回の結果に至ったのだろう。ただ、チャット内容はMicrosoftも閲覧できず、モデル学習にも用いられない安心感は大きい。
企業でのBing Chat Enterpriseの活用方法は?
Microsoft 365内のファイル参照機能も欲しいところだが、2023年7月18日(現地時間)に同社が公開した[公式ブログ]によれば、Bing Chat Enterpriseはあくまでもチャットシステム。Microsoft 365のデータを参照はMicrosoft Graphを利用するMicrosoft 365 Copilotが役割を担うようだ。社内のナレッジベースやFAQをモデル化する場合は、Azure OpenAI Serviceとオープンソースの[Azure ChatGPT]などを組み合わせた独自実装をお薦めする。
おそらく法人向けMicrosoft 365をサブスクリプションしているテナントは、そのままBing Chat Enterpriseを無償で使用できるだろう(月5ドルのスタンドアローン版も存在する)。だが、Microsoft 365 Copilotは月30ドルの費用がかかる([発表内容]。筆者も実際に触れていないため、コスト増に見合うか否かは言及できない。ひとまずIT部門は、Bing Chat Enterpriseがデータ分析や文章の要約、コーディングのベース生成など「何ができる」「何ができない」を明示した上で、業務利用をうながすのが得策だろう。なお、Bing Chat EnterpriseはMicrosoft 365 Business Standard/Business Premium/E3/E5で利用できるが、テナントの事前設定が必要になる。
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