国立環境研究所と東京大学の共同研究チームは、サーキュラーエコノミー(循環経済)の取り組みを事前評価する消費者行動シミュレーションモデルを開発した。「エージェントベース・シミュレーション」の手法を適用することで、必ずしも経済合理性に従わず、クチコミなどの社会的影響を強く受け、人によって製品の好みなどの特徴が多様な消費者行動を反映できるという。
国立環境研究所と東京大学の共同研究チームは、サーキュラーエコノミー(循環経済)の取り組みを事前評価する消費者行動シミュレーションモデルを開発した。「エージェントベース・シミュレーション」の手法を適用することで、必ずしも経済合理性に従わず、クチコミなどの社会的影響を強く受け、人によって製品の好みなどの特徴が多様な消費者行動を反映できるという。 エージェントベース・シミュレーションとは、システムをミクロな行動ルールに基づいて相互作用するエージェント(消費者や企業など)の集合としてモデル化し、施策導入などの介入による帰結を動的にシミュレーションする手法である。研究チームが開発したシミュレーションモデルは、同手法をシェアリング、リユース、リペアなど7種類のサーキュラーエコノミー施策に適用したもの。 研究チームは今回、家電製品を対象とする2種類の仮想的なケーススタディで、合計で2000人から8000人の消費者をコンピューター上に再現し、製品の購入、使用、故障、廃棄から循環までの30年間にわたる分析を多数回繰り返すシミュレーションを実行。将来にわたるサーキュラーエコノミーに関する取り組みの普及状況や、環境影響、循環性の定量化に成功した。 同チームはさらに、さまざまなシナリオを想定したシミュレーション実験を実行。サーキュラーエコノミーの取り組みに対する促進策、ボトルネック、リバウンド効果を、定量的に推計・検討できることも確認した。 今回のシミュレーションモデルを広く活用することで、サーキュラーエコノミーの取り組みが実社会に広く普及する前の早い段階で評価を実施することが可能になり、脱炭素・循環型かつ消費者に広く受け入れられる製品やサービスの設計、政策立案の支援につながることが期待される。研究論文は、環境分野の学術誌、リソース・コンサベーション・アンド・リサイクル(Resources, Conservation and Recycling)に2023年9月22日付けで掲載された。(中條)