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肝がんの予後を予測するトランスフォーマー・モデル

2023年09月16日 06時38分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京大学の研究チームは、ラジオ波焼灼術による肝がん根治手術後の予後を予測するAIモデルを開発した。チャットGPT(ChatGPT)などの大規模言語モデルの基盤技術であるトランスフォーマー(Transformers)を基に新たなAIモデルを開発し、従来の深層学習を基にしたAIモデルよりも予後予測能力が高まることを初めて示した。

東京大学の研究チームは、ラジオ波焼灼術による肝がん根治手術後の予後を予測するAIモデルを開発した。チャットGPT(ChatGPT)などの大規模言語モデルの基盤技術であるトランスフォーマー(Transformers)を基に新たなAIモデルを開発し、従来の深層学習を基にしたAIモデルよりも予後予測能力が高まることを初めて示した。 研究グループは、1999年2月から2019年12月までに東京大学医学部附属病院消化器内科で肝細胞がんの初回ラジオ波焼灼術を受けた1778人のデータを使ってトランスフォーマー・モデルを構築。具体的には1778人のデータのうち1422人分を訓練データに、178人分を最適な学習パラメーターを抽出するための検証データに、178人分を作成したモデルの精度を検証するためのテスト・データに使用した。1人1人のデータは、ラジオ波焼灼術時点の年齢、性別、肝臓の線維化マーカー、炎症マーカー、腫瘍マーカー、肝機能指標、肝炎ウイルス、肝がんの個数、最大腫瘍径、飲酒歴の有無など16種類を抽出した。比較のため、従来の深層学習を基にしたモデルも構築し、178人分のテスト・データで、それぞれのモデルの精度を評価した。 両モデルのc-indexを比較したところ、トランスフォーマー・モデルが0.69で、従来の深層学習モデルが0.60(1に近いほど精度が高い)となり、トランスフォーマー・モデルの方が精度が高かった。また、トランスフォーマー・モデルは外部のテスト・データを高リスク群と低リスク群の2群、あるいは高リスク群、中等度リスク群、低リスク群の3群に分ける高い識別能を示した。 研究成果は9月9日、ヘパトロジー・インターナショナル(Hepatology International)誌にオンライン掲載された。研究チームは、トランスフォーマーを基にしたモデルについて、肝がんに限らず他の医療分野にも応用できるとしている。

(笹田)

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