筑波大学の研究チームは、海洋に広く存在する油分解性の細菌は、油水界面上に強く付着しながら集団で密集して生育することで、油界面の屈曲を生じさせることを発見。この仕組みによって油水界面の面積が拡大し、より多くの細胞が直接油に接触できるようになり、効率的に油を分解していることが分かった。
筑波大学の研究チームは、海洋に広く存在する油分解性の細菌は、油水界面上に強く付着しながら集団で密集して生育することで、油界面の屈曲を生じさせることを発見。この仕組みによって油水界面の面積が拡大し、より多くの細胞が直接油に接触できるようになり、効率的に油を分解していることが分かった。 研究チームは、マイクロ流体デバイスを用いた観察系を構築し、細菌の細胞と微小な油滴との相互作用を高解像度で可視化。その結果、油分解細菌の一種が油と水の界面に強く付着し、生育に伴って油滴の形状を樹状突起のように変形させて表面積を広げることで、多くの細胞が油に直接、接触できるようにし、効率よく油を分解していることが分かった。また、理論物理モデルを用いて、バイオフィルム(微生物が固相表面に形成した集合体)の形成とその形状のダイナミクスの予測に成功した。 さらに、この油滴の形状変化は、細胞が野菊の花びらのように配置している中心から始まっており、液晶のネマチック相の分子配列(分子は一方向に配向するが、重心はランダム)に類似していることも分かった。同チームによると、細菌はバイオフィルムを形成し、互いに協力して、細胞の成長に伴う圧力を利用することで、野菊の花びら状の中心が隆起し、油界面の突起形成を引き起こして、効率的に油を分解しているという。 ある種の海洋細菌は、海洋に流出した石油などの油の周囲にバイオフィルムを形成し、これを栄養源とし、生分解するが、バイオフィルムの形成と油の分解との関連は解明されていなかった。今回の研究成果は、細菌を用いた環境浄化技術(バイオレメディエーション)の効率化に貢献することが期待される。研究論文は、サイエンス(Science)に2023年8月17日付けで掲載された。(中條)