以前の記事で、アップルが、充電ケースに液晶ディスプレーが付いた特許(US特許202300952A1)を取得したと書いた。これはすでに製品化されている「JBL Tour Pro 2」に似ているが、さらにケースに付加的な機能を付加し、ケース自体をウエアラブルデバイスとして使おうとする点にも特徴があった。
ループ形状にすれば、カバンや腕に通せる
AirPodsのケースの応用として、もうひとつ面白い特許(US特許11716560B1)をアップルが8月1日に取得した。出願は2021年3月31日だ。内容は「WIRELESS HEADPHONE ACCESSORY」で、端的にいうとAirPodsのケース形状を身につけるアクセサリーにしてしまおうというものだ。
特許の概要欄を引用すると、この“アクセサリー”の先端にはAirPodsを格納できる空間と充電機構が左右二個あり、それを柔軟な素材でつなぐものとある。この部分は添付図のFIG.1Aをみるとわかるように大きなU字型をしている。この両端を結合することでリング状にすることもできる。FIG.3Bを見ると、リングの側面には番号440のようにディスプレー部分を設けることもできるように書かれている。このディスプレー部分で曲の情報を参照したり、音量を調節したりできるとしている。使用するディスプレーは液晶パネル、LED、有機EL(OLED)そして、電子インクと広範囲に記載されている。これは設計図ではなく特許なので、請求範囲を広く確保するためである。特許を書くときにはなるべく請求範囲を広く書くのが常道だ。
そしてこのリング状のアクセサリーはFIG.6Bのようにキーリングのように使うこともできるし、FIG.6Aのようにバックパックの肩ベルトにも引っ掛けられる。あるいは番号830のように腕に巻くアクセサリーとしても使用できるという。FIG.6Aの番号811の扇型の部分は特許の本文を読むと、そこから指向性のサウンドを発してユーザー(のみ)に情報を知らせるとある。
AirPodsのケースを単にポケットに入れているならば、こうした使い方はできない。いくらケースを薄く小さく作っても、ポケットやバッグに入れているときは単に邪魔者にしかならないからだ。
しかし、ケースをアクセサリーと同化させてあえて外に出すならば、ケースを保持して置く部分をどう使うかで可能性が広がる。またデザインやカラーリングを凝ることで本当のアクセサリーとして使うこともできるようになるだろう。
以前紹介した特許では、映画鑑賞の時に爆発シーンやアクションシーンなどで触覚フィードバックをすることで演出効果を高められるという記述があった。このアクセサリー特許でも同様なことが可能となるだろう。
アップルはiPodにおいて、もともと目立たなくするものだったイヤホンの白いケーブルをファッションの一部に変えてしまったが、完全ワイヤレス時代の今では、ケースがそうなってもおかしくはないだろう。
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