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培養神経回路で「自由エネルギー原理」を初めて実証=理研など

2023年08月09日 06時50分更新

文● MIT Technology Review Japan

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理化学研究所らの国際共同研究チームは、近年注目される脳理論「自由エネルギー原理」により培養神経回路の自己組織化を予測できることを明らかにし、同原理がこの培養系の自己組織化原理として妥当であることを実証した。自由エネルギー原理は、全ての生物の知覚や学習、行動は、自由エネルギーと呼ばれるコスト関数を最小化するように決まるとする脳の理論である。

理化学研究所らの国際共同研究チームは、近年注目される脳理論「自由エネルギー原理」により培養神経回路の自己組織化を予測できることを明らかにし、同原理がこの培養系の自己組織化原理として妥当であることを実証した。自由エネルギー原理は、全ての生物の知覚や学習、行動は、自由エネルギーと呼ばれるコスト関数を最小化するように決まるとする脳の理論である。 研究チームは今回、神経回路がどのように外界を知覚しているかを表す「生成モデル」を、実験データからリバースエンジニアリングする手法を開発。実験観察される神経活動などの変数と自由エネルギー原理の数式に現れる変数とを自然に対応づけ、データ駆動的に生成モデルやシナプス可塑性(学習)アルゴリズムを導出できるようにした。 さらに、同手法を、混ざり合った複数の入力からその背後にある個々の信号源を取り出す「ブラインド信号源分離」の課題を実行するラット大脳皮質由来の培養神経回路の刺激応答データに適用。自己組織化(学習)の起こり方を定量的に予測できることを示した。 自由エネルギー原理はさまざまな脳機能を説明できる仮説であるが、検証不可能と見なす専門家も多かった。研究チームによると、今回の成果はデジタル脳開発に向けた重要なステップであり、将来的には、薬品が知覚に影響を及ぼすメカニズムの理解や、自律的に学習するニューロモルフィックデバイスの創出に貢献すると期待できるという。 研究論文は、科学雑誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)オンライン版に2023年8月7日付けで掲載された

(中條)

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