バルミューダが8月7日、同社製の扇風機に使われる羽根の技術を応用した小型風力発電プロジェクト「BALMUDA Energy Project」を発表。屋外の実証実験に移行する段階で、2023年秋にも実証実験開始予定だ。8月8日の決算会見で、同社の寺尾玄代表はプロジェクトを通じ「電力の地産地消」を目指すと話した。
扇風機から風力発電へ
同社が開発中の風力発電技術「モダン・マルチブレードタービン」は二重構造の羽根が特徴。内側と外側に2種類のブレードを配置して高い回転力を生み出す。同社の実験では優れたエネルギー変換効率を持つことが確認されたという。
モダン・マルチブレードタービンの技術のベースとなったのは、2010年に同社が発売したDC扇風機「GreenFan」。自然界の風を再現する独自の羽根により、従来の扇風機に比べて約1/10のエネルギーで動作する。この羽根の技術を基に風力発電の研究が始まり、数百種類の発電用の羽根(タービン)が開発され、数年にわたって改良を続けてきた。
現在の風力発電タービンは効率を追求して「大型化」「高速化」が進められているが、同社が注力するのは小型の風力発電機。コンセプトイメージによればポータブルではないがコンパクトな製品で、成功すれば、住宅地や都市部など大型の風車を設置できない場所でも風力発電が可能になる。
具体的に製品として提案するのは風力発電と太陽光パネルの組み合わせ。風力発電機は最終的に「家庭で使えるようなサイズ」を目指し、最終的には消費者向けに提案することを目指す。事業化に向けての初期段階では法人向けにサービスを提供する可能性もあるという。事業化の目処は、成功すれば5年以内。
電力の地産地消を目指す
寺尾玄社長は事業の最終目標について「電力の地産地消」と説明する。
「グリッド経由でほぼすべての人々が電力を受け取っている状況は、逆に言うとグリッドに安全性を委ねてしまっている。将来のことを想像してみると、きっと人類は電力の地産地消をしているんじゃないか。それがいつになるかはわからないが、少しでもそこに関与できるなら、エンジニア冥利につきる」(寺尾社長)
その上で、事業における勝機は扇風機のノウハウだと説明。「流体力学周りについての自信や強みやノウハウが性能を作り出し、実現性を作り出す」とした。
経営は苦境 金の卵になるか
バルミューダの経営は、原価高や為替の影響、いわゆる巣ごもり需要の反動を受けて、売上高と利益ともに悪化。来年からの反転攻勢に向けて、既存事業および新事業にリソースを集中させるとしており、家電では10月、11月、さらに来年にかけて、複数の新製品を発表予定。既存ラインアップは値上げも含めて検討する。
そんななか、事業化まで時間がかかる「BALMUDA Energy Project」は、成長のためのたゆまぬチャレンジという位置づけ。スマートフォン事業からの撤退は今期の利益悪化の一因にもなっているが、エネルギー事業は新たな「金の卵」になれるのか。経営が傾くたびにいい製品が出るという同社のジンクスに期待したい。
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ。6歳児と2歳児の保護者です。Facebookでおたより募集中。
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