NTTドコモは、通信品質の低下が顕著に見られた都内4エリア(新宿・渋谷・池袋・新橋)について、7月28日に改善状況を公表(「ドコモ、データ通信の品質に難があった新宿・渋谷・池袋・新橋で改善したと公表」)。この件でメディア向けに説明会を開催した。
今年初め頃から通信品質の低下が見られるドコモ網
コロナ禍からの人流の戻りの予測を見誤った
ドコモのネットワークについては、今年の初め頃からSNSを中心に、「アンテナは表示されるのにデータ通信ができない」「速度が極端に遅い」といった声を頻繁に見かけるようになった。そして、4月26日に開催されたネットワーク戦略説明会で、今夏までの対策の実施を表明。それが今回の発表につながっている。
あらためて通信品質の低下の原因としては、年々増加するユーザー1人あたりのデータ通信量とともに、コロナ禍明けの人流の戻りがもう少し緩やかな形になると見積もっていたが、それが予想以上だったことで設備容量が厳しくなったと説明する。
ただ一方で、コロナ禍以前(2020年初頭)と2023年で国内のスマホユーザー数が大きく増加しているわけではない、1人あたりのデータ通信量はキャリア側で情報を持っている、また他キャリアでは同様の状況が発生していない、といった点を質疑応答時に尋ねたが、明確な答えは得られなかった。
「カバーエリア調整」「周波数分散制御」で対策
設定変更、リアルタイムで確認と改善サイクルを高速化
いずれにしても現実に通信品質の低下が進んでいる状況では、向上のための取り組みを進める必要がある。
根本的な対策としては、一番にはやはり基地局の構築であり、実際に継続して進めている。ただ、これには基地局を設置する施設のオーナーとの交渉など、時間が必要となる。渋谷駅ハチ公口周辺の例のように、完成時期を約3ヵ月前倒ししたケースもあるが、どうしても1年2年といったスパンになってしまう。
そこで今回の取り組みでは、比較的短期で可能な手法として「カバーエリア調整」「周波数分散制御」の2つが実施された。
まず前者のカバーエリア調整は、接続しているスマホが多く、混雑しがちな基地局において、そのカバー範囲の端の端末は、隣接した比較的空いている基地局に接続できるように電波の飛び方を調整するというものだ。
具体的には、アンテナの角度調整、出力調整、指向調整などを行なう。従来はこれらの方法でエリアを最適化する際は、シミュレーターで電波の飛び方を計算。それに基づいて設定を変更し(アンテナの角度は遠隔制御できるタイプと物理的に変更するタイプがある)、トラフィックの様子を数日見るといったサイクルで実施していた。
しかし、今回は迅速な対策が必要だったため、現場にスタッフを派遣し、設定変更後の状況をリアルタイムで測定。さらなる最適化といった、より高速なサイクルでチューニングを進めた。
一方の周波数分散制御だが、まず前提として、ドコモのネットワークは4Gだけでも、800MHzのほかに、2GHz/1.5GHz/1.7GHz/700MHz/3.5GHzとたくさんの周波数でサービスが提供されている。そして基本的には、端末で対応している範囲で、より多くの周波数をつかむことで、安定かつ高速な接続を実現する。
しかし、ユーザーが集中している場所で、電波が飛びやすい800MHzを多くの端末がつかみ続けると、その800MHzが極端に混雑してしまい、結果として通信がしにくい状況が発生してしまった。そこで800MHz以外の周波数で安定した接続が可能な端末は800Hzを放す、つまり周波数ごとにユーザー数を分散できる設定にしたという。こうした設定は、従来も花火大会など一時的に極端に人が集まる場所ではなされており、今回都市部の混雑エリアでも実施した形だ。
発表したのは都内4エリアだが
それ以外の場所でも取り組みを進めている
このような取り組みの結果、新宿・渋谷・池袋・新橋の4エリアでは、下の表のように比較的安定しての利用が可能になったとする。それでも4G端末で10Mbps以上というのは、速度的に若干遅いとも感じられるが、スマートフォンの一般的な用途、たとえば動画配信サービスの動作環境に対応する速度を基準としているとのこと。
また、28日の発表では都内4ヵ所のみの状況が公表されたので、都心部の他のエリア、また京阪神などの他の都市部の状況がわからず、SNSでは「4ヵ所しか対策しないのか」「東京だけしか改善しないのか」といった声も見られた。この点については、公表された4ヵ所に限らず、主要ターミナル・繁華街など、通信品質が低下しているエリアで、8月末をめどに対応を進めている最中と説明する。ただし、具体的な場所の言及はなかった。