大阪大学の研究チームは、太陽光照射により、水と酸素を原料として非常に高い過酸化水素(H2O2)生成活性を示す光触媒樹脂を開発。汎用のイオン交換型高分子を利用して合成したメタルフリー触媒が、人工光合成型H2O2製造に有効であることを実験的に確認した。
大阪大学の研究チームは、太陽光照射により、水と酸素を原料として非常に高い過酸化水素(H2O2)生成活性を示す光触媒樹脂を開発。汎用のイオン交換型高分子を利用して合成したメタルフリー触媒が、人工光合成型H2O2製造に有効であることを実験的に確認した。 研究チームはこれまで、H2O2生成活性を示す光触媒樹脂として、レゾルシノール-ホルムアルデヒド(RF)樹脂に着目して研究を続けてきた。今回さらに、汎用のイオン交換型高分子である「ナフィオン(Nafion:Nf、パーフルオロスルホン酸系ポリマーの商標名)」をRF樹脂に複合したRF@Nf樹脂を合成。樹脂を小粒子化することにより、光触媒活性が向上して効率よくH2O2を生成できるほか、樹脂表面が疎水化されることによりH2O2の分解が抑制され、高濃度のH2O2を製造できることを見い出した。 この光触媒樹脂は、汎用の原料(レゾルシノール、ホルムアルデヒド、Nf)を酸性溶液中に加えて高温水熱処理するだけで合成できる。今回の研究成果により、水と空気を原料として、使いたい場所で使いたい量だけH2O2溶液をオンデマンド合成する小型H2O2製造デバイスの実現が期待できるという。 H2O2は漂白剤や消毒剤として重要な化学物質であるほか、燃料電池発電の燃料などエネルギーキャリアとしても注目されており、地球上に豊富に存在する原料から再生可能エネルギーを用いて合成する方法が期待されている。研究論文は、米国化学誌「ジャックスAu(JACS Au)」に、2023年7月24日付けで公開された。(中條)