東京大学の研究チームは、ポリマーが丸まるエネルギーを利用した熱化学電池を開発し、小さな温度差から大きな電圧を発生させることに成功した。熱化学電池は、熱を電気に変換する熱電変換素子の一種であり、最近になって急速に性能を向上させている。
東京大学の研究チームは、ポリマーが丸まるエネルギーを利用した熱化学電池を開発し、小さな温度差から大きな電圧を発生させることに成功した。熱化学電池は、熱を電気に変換する熱電変換素子の一種であり、最近になって急速に性能を向上させている。 研究チームは、高分子が見せる「ほんのわずかな温度差で性質を大きく変える」相転移現象に着目。温度によって伸びたり丸まったりと、形状と性質を変化させるコイル・グロビュール転移を示すPNIPAM(ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド))と呼ぶポリマーに、酸化還元反応を示すビオロゲン(N,N’-アルキル-4,4’ビピリジン)と呼ぶ官能基を導入した。その結果、このポリマーは45℃程度で相転移(丸まる)し、還元すると25℃程度で丸まることが明らかになった。 作成したポリマーを水に溶かし、電極を2本挿入して電極間に温度差を作ったところ、低温ではゼーベック係数が0.09mV/Kと低い値だったのが、35℃付近から値が急激に上昇し、最大で2.1mV/Kにまで達することが分かった。この現象は、ポリマーが高温では丸まり、そして丸まっているときは電子を受け取る(還元)性質を持っており、高温側の電極で電子を受け取り、低温側では電子を放出するためだという。 研究成果は6月14日、アドバンスト・マテリアルズ(Advanced Materials)誌にオンライン掲載された。(笹田)