復活資金を募集すべく配信を実施も目標に遠く及ばず
でも、天涯社区から生まれた名作は残っている
天涯社区は以前のユーザーにとって懐かしい場所である一方、そんな彼らすらも時代の波に流され利用しなくなり、過疎化が進んだ結果、広告収入が減り、今年3月に突然利用できなくなった。IDC(インターネットデータセンター)への支払いを長い間滞納した結果、ドメイン名が裁判所によって凍結されてしまったのがその理由だ。
そこで5月28日から、中国向けTikTokの抖音で、天涯社区の元編集長が復活のための資金集めに、ライブストリーミングを1週間実施。商品を販売するとともに、復活資金を募るというアクションに出た。「300万元(約6000万円)を集めればサービスは復活する」と旧スタッフが集って配信をしたのだが、初日の夜の同時視聴者数1045人がピークだった程度。多くの元ユーザーのコメントが流れ、スタッフは当時のハンドルネームをたずねながら交流していた。天涯社区に関心を持たず、配信も見ないと言っていた元ユーザーがいたが、その一方で参加した元ユーザーには同窓会のような懐かしさだっただろう。
結局配信が終わり、6月末までに得た資金は16万元弱(300万円強)と、目標額には遠く及ばない結果となった。天涯社区を復活させようという人がそんなに多くなかったという事実が、残酷なまでに明らかになったのだ。一時代を築いた天涯社区にはユーザーが書き込んだ宝のような莫大なデータがあるが、もはや取り出すのも難しい。
あまりに長く存続し、しかも00年代に活躍したサイトだったので突然の終了に見えなくなって寂しいという声も少ないが、とはいえ中国的なのが結果として幸いと言うのだろうか、名スレデータが勝手に多数売られていることで、記憶に残る作品は記録として残っている。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で、一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。書籍では「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立」、「中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか? 中国式災害対策技術読本」(星海社新書)、「中国S級B級論 発展途上と最先端が混在する国」(さくら舎)などを執筆。最新著作は「移民時代の異国飯」(星海社新書、Amazon.co.jpへのリンク)
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