今回のひとこと
「タイガー魔法瓶の原点は、団らんへの憧れである。コロナ禍では、友人や家族と食卓を囲むことや、日常の何気ない団らんが、当たり前ではなくなった。タイガーは、100年に渡って蓄積した技術を価値に変え、世界中に幸せな団らんを広めることに邁進する」
創業後半年で関東大震災に見舞われる
タイガー魔法瓶は今年100周年を迎えた。
取引先を対象に開催した「創立100周年 感謝の集い」で、タイガー魔法瓶の菊池嘉聡社長は、「100年という区切りの年を迎えるにあたり、創業時の初心を忘れずに、社会やお客様の課題に対して常に向き合い、温もりのあるアイデアで、食卓に新たな常識をつくり続ける。そして、世界中に、幸せな団らんを広めることに邁進する」と抱負を述べた。
タイガー魔法瓶は、菊池社長の祖父である菊池武範氏が、1923年(大正12年)2月3日に、虎印魔法瓶製造卸菊池製作所を創業し、「虎印」の魔法瓶の製造、販売を開始したのが始まりだ。
高等小学校の卒業を待たずに働きに出た大阪での奉公時代。冬場には冷めたお茶をご飯にかけて食べる生活を送っていた創業者は、常々、「熱いお湯やお茶が、いつも飲めたらなぁ」と思っていたという。そのときに出会ったのが、輸入されていたテルモスの魔法瓶だ。将来性がある商品として魅力を感じ、国内メーカーであったイーグルマホービンでの経験を経て独立。4人の社員で魔法瓶メーカーを設立した。
目指したのは、当時は高級品でありながらも、壊れやすかった魔法瓶を、独自の技術によって改良し、信頼性の高い魔法瓶として、普及させることだった。
その信頼性を知らしめるきっかけとなったのは、意外な出来事だった。
創業から約半年を経た1923年9月1日に発生した関東大震災で、東京は壊滅的ともいえる被害に見舞われた。だが、このときに、ある店舗で在庫として保管していた魔法瓶の大部分は壊れてしまったものの、虎印魔法瓶の100本すべての商品が無傷だったのだ。この実績は瞬く間に広まり、多くの注文が殺到。虎印魔法瓶に対する評価が一気に高まったのだ。
その後、ハンディポットの草分け的存在となる「ベークライト製卓上ポット」や、東海道新幹線の開業にあわせてビュッフェに採用されたステンレスジャーなどを開発したのに続き、1970年には、現在も続く「炊きたて」ブランドの電気ジャーを発売。1年後には100万台を突破する大ヒット商品となった。1972年にはハイビスカス柄の斬新なデザインを採用した製品群を展開。これが家電の定番ともなる歴史的ヒットを記録した。なお、100周年を記念して、花柄を採用した商品を、復刻シリーズとしてウェブ限定で販売している。
1974年には、炊飯機能を搭載した炊飯電子ジャー「炊きたてダブル」を発売。かまどで炊く工程を徹底的に分析し、よりおいしく炊き上げるために、新たな調圧口を設けたのが特徴だった。1980年には湯沸かしエアーポット「わきたて」を発売し、1984年には電気ポット市場においてトップシェアとなる32.7%を獲得。1986年には、魔法瓶の中瓶をそれまでのガラス製からステンレス製にしたダブルステンレスボトル「サハラスリム」が人気を博した。
2006年には、内釜に本物の土鍋を採用した「土鍋釜」を発売して高級炊飯器市場に参入。2014年には感動のおいしさを追求したGRAND X(グランエックス)シリーズを発売し、土鍋圧力IHジャー炊飯器やIH陶板焼き器、IHホームベーカリー、IHスーププロセッサーをラインアップ。その一方で、JAXAの宇宙ステーション補給機「こうのとり7号機」に搭載した小型再突入カプセルの開発や、SpaceXの宇宙船「ドラゴン22号機」に搭載した「真空二重構造断熱・保温輸送容器」の開発に携わるなど、宇宙事業にも進出している。
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