東北大学、高輝度光科学研究センター、産業技術総合研究所、名古屋大学、京都大学の研究グループは、充放電による蓄電池電極内の経時的な容量劣化の様子を、非破壊で定量的に追跡できる手法を開発した。
東北大学、高輝度光科学研究センター、産業技術総合研究所、名古屋大学、京都大学の研究グループは、充放電による蓄電池電極内の経時的な容量劣化の様子を、非破壊で定量的に追跡できる手法を開発した。 蓄電池の電極は複雑な構造を持っており、そこで生じる劣化も空間的、時間的に不均一なため、その様子を正確に計測することは難しい。現状では、電気化学インピーダンス法などの電気化学測定手法で電極内に不均一に生じる劣化を平均化した情報として抽出するか、電極を破壊して一部を取り出して、電子顕微鏡などでごく限られた領域の劣化を分析する方法が採られている。 研究グループは、大型放射光施設「SPring-8」のBL37XUラインで得られる高輝度なX線を使い、コンピュータ断層撮影―X線吸収微細構造法(CT-XAFS法:Computed Tomography-X-ray Absorption Fine Structure)を活用することで、蓄電池の充放電時に、電極内の活物質の充電状態(Li量)の 3次元的な空間分布とその時間進展を非破壊かつ定量的に追跡できる手法を開発した。 この手法で得た一連のデータを差分画像解析で処理することで、充放電過程のどこでどの程度劣化が生じたのかを3次元的に視覚化できる。さらにこの手法では、電極の微細構造の情報も同時に取得でき、電極のどの部分でどのような劣化が起こりやすいかといった、劣化と電極の微細構造との関係も分析できる。 研究成果は7月14日、スモール・メソッズ(Small Methods)誌にオンライン掲載された。今回開発した手法によって、蓄電池開発は従来のトライ&エラーに頼る手法から脱却し、効率よく蓄電池の蓄電容量の向上と長寿命化を実現できるという。(笹田)